一つ一つを見た目よく、おいしく
京都で好きなパン屋として、ここ「まるき製パン所」の名を挙げる人も多いだろう。看板商品は、具を挟んだコッペパン。ハムキャベツ、コロッケ、エビカツといったおかず系から、チョコ、あんこ、クリームなどの甘い系まで約16種類もの味が並んでいる。十数個まとめ買いをする人も珍しくない。目当ての味が売り切れても、「すぐ作りますから、少しお待ちください」と、店員さんはにこやかだ。

実家に戻って気づいた、
ほかのパン屋との違い
今回、編集部は初めて、「すぐ作ります」の理由がわかった。バックヤードに、こんなにたくさん働いている人がいるなんて!揚げる人、パンをオーブンから取り出す人、具を詰める人、包む人。店頭の4人が接客、その奥には10人近くが、肩がぶつからんばかりの距離ですれちがう。注文に応じて、コッペパンがどんどん店頭に補充されていく。だから品切れしてもすぐ、店頭にはできたてが並ぶ。

一番人気はキャベツとハムを挟んだハムロール210円で、あんやクリームは自家製。
戦後の1947年、「まるき製パン所」開業当初から、家族で営む家内制手工業的スタイル。店のスタッフは増えても、やり方は変わらない。初代の孫にあたる三代目の木元陽介さんに話を聞いた。
「僕が知りうる限り、創業時からコッペパンのレシピは同じですね」。
「小さい頃から、店は自分が継ぐものと思っていた」陽介さん。高校卒業とともにパンと料理の専門学校に進学。大阪のブーランジェリーやホテルで経験を積み、28歳で京都に戻った。
陽介さんにとっては慣れ親しんだ実家だが、パン職人の視点であらためて見ると、それまで働いた店とはすべてが違っていた。やわらかくて喉越しよく、歯切れもいいコッペパン。「まるき製パン所」で、多い日で焼き上げるコッペパンの総数はなんと2000本。朝3時からの生地づくりは陽介さんの仕事だ。オーブンで一度に焼けるのは60本。朝5時から15時まで、オーブンが稼働し続けている。
「一つ一つのパンを見た目もよく、おいしくつくるのは楽しいです」。

なごやかな空気感も店の味
家内制手工業だからできること
もうひとつ、まるき製パン所といえば思い出されるのは、店頭スタッフの笑顔だ。自身もパン職人として働いていた、陽介さんの妻、明素加(あすか)さんはこう振り返る。
「初めて来て驚いたんです。パンのおいしさで行列ができるほどなのに、ギスギスしない。こんなに和気藹々(わきあいあい)としたバン屋さんがあるんだって」。
陽介さんはこう話す。
「お客さんと接するのは短い時間ですが、店主や従業員のお客さんへの思いは伝わります。パンがおいしい店は他にあるけれど、なごやかな対面販売は、うちの付加価値であり強みだと思っています」。
陽介さんに目標を尋ねると「なるべく形を変えずにいきたいです」。パン販売の付加価値が、良質な素材や味だけでないことが伝わってくる。稀有な店だ。

まるき製パン所
TEL
075-821-9683
ACCESS
京都市下京区松原通猪熊西入北門前町740
最寄りバス停
大宮松原
営業時間
6時半~20時(日・祝~14時)共に売り切れ次第終了
定休日
月