ホテルは社交場
京都駅の南側に本格的なアートホテル「ホテル アンテルーム 京都」が誕生したのは2011年のことだ。ただ、客室や廊下にアート作品が飾ってあるだけのアートホテルとは一線を画す。つねに変化する京都のアート&カルチャーの「今」を現代進行形で発信する。


観光客の少ないエリアで
アートの力に期待
ホテルの運営母体である企業の主事業は「世界がワクワクするまちづくり」。その延長線上に誕生したのがこのホテルだ。
「もともと予備校の学生寮だった施設で、当時は観光客も少なかった。新しい人の流れを作る起爆剤として、美術大学も多い京都のアートシーンに望みをかけたと聞いています」と開業翌年に新卒入社した熊崎なみなさんは語る。地域に根ざし、開かれた場所を目指すアンテルームでは宿泊客以外も利用できるギャラリーとレストランを併設、多様なイベントが企画される。かくいう熊崎さんが大学生のときにホテルを知ったきっかけも、ここでの音楽イベントだった。
「まず、見た目がホテルらしくない。そして大学生の作品も展示をしているような、分けへだてのなさに驚きました」。
熊崎さんはこれまで他所のイベントを訪れたときの、どこかクールなビジネス感が好きになれなかった。それと対照的に、アンテルームでは熱量を感じたのが就職の動機になった。入社後もホテルをおもしろがってくれるアーティストやスタッフと出会い、仲間は増えていった。

美術館のキュレーターのように
感性の先に企画を立てる
アンテルームの特徴は、スタッフが能動的にコンテンツを考え、アーティストと共に実行する点にある。
「アンテルームには各自が興味のあることを深掘りして、それをコンテンツ化していく気風があります」。
そう話すのは7年前にデザインホテルの支配人を経て転職した豊川泰行さん。学生時代にビデオゲームを学問の研究対象としていた経験を活かし、アーティストもゲームクリエイターも参加できる展覧会を企画。今ではその活動範囲を海外にも広げている。
美術館の優れた展示の裏には作家を影で支えるキュレーターがいるように、魅力的なアートホテルには情熱をもって運営するスタッフの姿がある。根っこにあるのは「京都の魅力は寺社だけじゃない。京都の未来を担う人たちと共に新しいアート&カルチャーを作っていきたい」という地域に対する想いだ。熊崎さんは音楽、豊川さんはゲーム。自分の感性の先に企画を立てるから、おもしろいイベントになる。
古くからホテルは社交場であり、その時代を象徴する価値を生み出す人たちが集まる場所。今年15周年を迎えるアンテルームもまた作家やゲストと共に、そこで起こる化学反応を楽しみながら拡張してきた。今、このホテルで起こっていること。それは京都の未来の始まりでもある。

「こんなふうに遊んでもらえるなんてうれしかったです」と豊川さん。

ホテル アンテルーム 京都
TEL
075-681-5656
ACCESS
京都市南区東九条明田町7
最寄りバス停
札ノ辻