シニア食堂、あと5年は続ける
東九条で、開店25年を迎えた韓国料理店。シゴルは韓国語で「田舎」の意味だ。家庭料理を中心に、自家菜園で収穫したぴかぴかの無農薬野菜がテーブルに彩りを添える。客が「おばあちゃんの家みたいでホッとする」と口にするたびに、店主のペク・ヨンイさんは「我が意を得たり」と、にんまりするのだった。
軽い気持ちで始めた
手料理をふるまう店
韓国の慶尚南道出身のペクさんが来日したのは1984年。30歳を過ぎるまで福祉担当の地方公務員として働いていたが、縁あって東九条に住む在日韓国人男性とお見合いした。「誰も知らない土地で人生をがらりと変えてみるのもいい」と、覚悟を決めて日本に嫁いできた。3人の子宝に恵まれ、子育てに専念した。
もともと福祉活動に関心があったペクさんは、次第に地域活動に関わるように。人権学習の講師として中学校で出前授業をしたり、毎年11月に開かれるコリアンフェスティバル「東九条マダン」に出店したり。忙しくも充実した日々を過ごした。
その頃、「あなたの韓国料理を食べてみたい」と言われる機会が増え、軽い気持ちで自家農園での無農薬野菜を使った料理店を開いた。最初は知人に手料理をふるまう程度だったが、事情が一変。夫が経営する会社が倒産し、ペクさんが家族を養わねばならなくなったのだ。「子どもたちはまだ大学生。この店で切り盛りするしかなかった」と、苦境を振り返る。


25周年の節目の年に
シニア食堂をスタート
2014年に今の店舗に移転。「昔、韓国で食べていたような田舎料理を、もっと多くの人に食べてもらいたい」。そんな思いから、ペクさんは店の席数を増やし、自家農園も増やして心を込めた料理を作っている。地道な努力が実を結び、シゴルはこの東九条に欠かせない店となった。
2025年、ペクさんは新たな挑戦を始めた。月に1度、75歳以上を対象にしたシニア向け無料食堂を始めたのだ。日本の統治期前後に朝鮮半島で生まれた在日韓国・朝鮮人の一世は現在80~90代。高齢化が進んでいる。
「年を取ると買い物すらままならない。かつては自分で作っていた、懐かしい味も食べられない。そんな彼らに、手作りのあたたかい味を思い出してほしくて」。
反響は大きく、あっという間に25人の予約は埋まった。ペクさんは、高齢者なら国籍を問わずに迎え入れる方針だ。「みなさんがうれしそうに食事をする姿を見ると、私も元気がもらえる。来日して40年を超えますが、この活動が日韓友好の一助になれば」。
子ども食堂ならぬシニア食堂。「私が80歳になるまでのあと5年は、絶対に続けます。『寄付も大歓迎』って書いておいてね」と茶目っ気を見せるペクさん。
国や時代を越えて、目の前の人を思う気持ちが、福祉の原点なのかもしれない。ペクさんの視線はどこまでもあたたかい。

75歳以上であれば飲食代無料(要予約)。毎回、20人前後のシニアがにぎやかに卓を囲む。
焼肉・韓国料理 シゴル
TEL
075-661-5411
ACCESS
京都市南区東九条上御霊町7-1
最寄りバス停
札ノ辻、地下鉄九条駅前
営業時間
18時〜24時
定休日
不定休