ライター・エッセイストのさとゆみ(佐藤友美)が書く「京都人じゃないからこそ感じる京都の魅力」。 京都と東京、2つの都で2拠点生活をする、京都歴1年の新参者が送る新連載「よそものだけど、大好きです」第5回。
私の両親は京都好きだった。
なにかにかこつけ、北海道から京都まで旅行にきていた。桜の醍醐寺、秋の渡月橋、雪の大原。実家には京都旅行の写真がたくさんある。
父は他界したが母は健在で、私が京都に拠点を持ってからは何度か遊びにきている。
私が家で仕事をしている間にも、ネットで京都情報を集め、お寺やらお山やら美術館やら、いろんな場所を散歩して帰ってくる。万歩計を見ると2万歩なんてザラだから、私より健脚だ。
京都のどんなところが好き? と聞くと、ちょっと考えたあと、母は「やっぱり、路地かな」と言う。ちょっとした路地がたくさんあって、ただ歩くだけでも、それが楽しいそうだ。
よくわかる。京都は、歩くのが楽しい。そして、走るのも楽しい。
東京ではなかなか習慣にならない朝ランニングが、京都ではまったく苦にならない。鴨川沿いを走るのはもちろん気持ち良いのだけれど、それよりも足の向くまま、街中を適当に走るのが良い。
大抵は、2、3キロ走ったら折り返す。もちろん、行きと帰りは別の道を走る。何度走っても、家の近くでさえも、知らない道がたくさんある。
長い距離を走りたいときは、帰りにバスに乗って戻れるように着替えを持って走る。縦横無尽のバスが充実しているのも京都ランのいいところだ。往復走らなくても良いと思えば、結構な距離を走ることができる。遠出することもある。嵐山まで嵐電で行って、10キロ走ってまた電車で帰ってきたこともあった。
とにかく、どこを走っていても飽きない。京都の家には、ランニングシューズとウェアを常備してある。どこに行ってもお寺や神社があって、お手洗いが借りられるのもありがたい。これは地味に、京都ランニングが続く理由のひとつでもある。
以前、東京から遊びにきた友人と、早朝の花見小路を抜け、八坂さんにお参りし、円山公園を抜け、平安神宮の鳥居を横に見ながら、南禅寺で引き返し、ぐるっと10キロ弱を走ったことがある。
祇園の石畳を走っているとき、その彼は「お化粧前の街って感じで、ドキドキしますね」と言っていた。たしかに、まだ目覚める前の街は、夜の色気とはまた違った趣がある。
東京ではスマホのGoogleマップ片手に目的地まで最短で歩こうとするけれど、京都では方角もなにも考えずに直感で直進したり右折したり左折したりする。思いもかけない光景に出会えて、ふふふとなったりする。
散歩だけじゃなく、ランニングだけでなく、人生もこんなふうに気まぐれに生きていけたらいいよなあと思う。
よそものだけど、大好きです。
右に曲がっても左に曲がっても楽しい京都の小路。


ライター・エッセイスト
佐藤友美(さとゆみ)
PROFILE
ライター・エッセイスト。1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経て、ライターに転向。現在は、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆する。
著書に『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)『書く仕事がしたい』(CEメディアハウス)『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)など。
2025年夏より、京都と東京、2拠点を行き来する。