気取らない、シャリこま寿司
ネタは市場のお墨付き。
肩肘張らない江戸前寿司。
「もともとは、舞妓さんが一口で食べられるように気を遣ったんでしょう。うちは“シャリこま”ですね」。七栄鮨の3代目、植村浩光さんが、慣れた手つきで鮮やかに握るのは鱚。捨てシャリをせず、一度で握りを決める正確さは先代譲りだ。すうっと細長く小振りの寿司は、酢飯が小さいことから、シャリこまと呼ばれるもの。半透明の白身からは木の芽がうっすらと透けている。そんな一仕事もさすがは江戸前。一口いただくと、なんと上品なお寿司だろうとため息が出る。目と鼻の先にある、中央卸売市場のワイルドさとは、また違う趣が感じられる。
「ずっとこの界隈で育ったので、やはり私には祇園より馴染みますよね。正直、ここでやるのがとても嬉しいんです」。初代が戦後間もなく、よろず屋から握り寿司の店舗にしたのは昭和22年のこと。先代は祇園で七栄鮨を開花させ、発祥の地の七条へ13年前に戻った。その頃から、植村さんはこの店のすべてを任されることになった。


リーズナブルでも
寿司のネタは一流。
七栄鮨の価格帯は2貫で250円から、と大変手頃である。しかし、ネタの鮮度とグレードは、極めて高い。味にうるさい中央市場の客のお墨付きだ。「地元の利点ですよね。市場の皆さんには、本当に良くしてもらっています。出荷量を知り、その時期に一番美味しいものを分けてもらえる」。この利点は、七栄鮨の黒板に日替わりで登場する、珍しい一品ものからもわかる。「ときどき、味を見に来て下さってるんですよ。だから、下手なものは出せないです。とてもいい刺激になってますよ」。
七栄鮨の魅力はネタだけではない。価格帯からは考えられない細やかな仕事もその1つ。「山葵はすぐに風味が落ちるから、寿司をお出しする直前に摺り下ろしてます」、と植村さん。回転寿司より少し高いだけで、これほどまでに、本格的な寿司があるのかと感心する。
気軽に食べられるスタイル。
これが本来の寿司。
「寿司って、ある意味ファーストフードだと思うんです。ネタと御飯を一緒に食べるってそんなにないでしょう。だから、気軽に楽しく食べて欲しいんですよね」。祇園の店は接待客が多く、店内は緊迫感に包まれ、静まり返っていたという。「元来、寿司屋は高級なものではなく、屋台から始まったと聞いています。こっちの店は家族連れや、若い方もたくさん来られるんですよ」、と満面の笑みで語る植村さん。客との会話やコミュニケーションが、店をやっていて一番楽しいという。
「“ついつい来てしまうんだよね”ってお客さんに言われることがあります。そんなとき、とても喜びを感じます」。肩肘張らず、美味しい寿司を好きなだけたっぷりと食べてほしい。七条で栄えるようにと名付けられたこの店は、多くの地元客で賑わっている。

七栄鮨 七条店
TEL
075-312-9208
ACCESS
京都市下京区西七条北東野町27
最寄りバス停
七条御前通
営業時間
17時〜23時
定休日
水