ライター・エッセイストのさとゆみ(佐藤友美)が書く「京都人じゃないからこそ感じる京都の魅力」。 京都と東京、2つの都で2拠点生活をする、京都歴1年の新参者が送る新連載「よそものだけど、大好きです」第6回。
関西出張の際、大阪ではなく京都に宿をとるようになったのはコロナ禍のこと。インバウンドを失ったあの時期、憧れのお宿にお安く泊まれる京都に、私は足繁く通った。
当時は、息子の小学校もオンライン授業になることが多かった。出張ついでに子どもも誘って、よく京都で過ごした。そして、授業の合間に、観光者向けの施設や体験イベントに2人で通った。
侍時代を体験できる「太秦映画村」はもちろんのこと、たとえば組紐づくり。何十人も入れそうな部屋は貸切で、私たちは『君の名は。』で見た、あの組紐を体験させてもらった。

金箔を貼る工作もやってみた。2人で違うデザインにしようと考えたお皿は、いまも東京の家に飾ってある。

こういった、観光客向けの「ちょび体験」がたくさんできるのが、京都の楽しいところだ。お茶もお花も深淵があるし、おいそれとは手を出せないけれど、「自分は観光客だから」を免罪符にすれば、何百年と続く伝統的な技術を、間近に見たり体験したりすることができる。
古民家に泊まるという経験も、京都で初めてした。部屋の中にある小さな坪庭。夏は涼しい土間。縁側に灯篭。一度泊まると、ホテルに宿泊する気はなくなって、「次はどこに泊まろう」と、毎日のようにairbnbのサイトを見ていた。
この「ちょび体験」を何度もしたからこそ、昨年、築98年になる京都の古民家を借りようと思えたのだ。
京都ならではの「ちょび体験」といえば、それまで敷居が高すぎて断念していたお着物。5年前に京都のレンタル店でお借りして以来、何度もリピートしている。
東京で着物を着ようと思ったら一世一代の大ごとになってしまうけれど、京都だったら、観光客向けのレンタル着物屋さんが、ここかしこにある。
「成人式以来、初めて着るんです……」とおそるおそる訪れたレンタル着物店さんでは、男性のスタッフさんが懇切丁寧に着物選びを手伝ってくださった。
「正絹が良いですよ」と勧めてくださったスタッフさんに「しょーけん、ってなんですか?」と聞いたくらい無知な私に、親切に着物のあれこれを教えてくださった。
着付けをしてくださった女性のスタッフさんには、「お手洗いはどうすればいいのでしょう」と聞いたりして(めっちゃ不安だったのだ!)、そんなアホほど初心者の私にも、みなさん本当に優しかった。

その後、すっかりその楽しさにハマった私は、なにかにつけてレンタル着物を楽しませてもらっている。
一瞬だけ「お着付けを習おうかしら」と思ったけれど、いやいや、着物に手を出したら天井なしだと聞くし、年に数回、こうやって人様に着付けていただくくらいが私にはちょうどいいと思い直した。
季節に合わせたお着物を選んでもらえるのも、髪型まで綺麗に整えてもらえるのも、レンタル着物店ならでは。

心配していた「お着物警察」みたいな方にご指導されることも今のところはなく、これもインバウンドの方たちが好き好きに着物を着て歩く京都ならではだなあ、なんて思っている。
先日は、床に誘っていただいたので、いそいそと浴衣で出かけた。
一緒にお食事をした友人が素敵な浴衣を着ていたのだけれど「背中に保冷剤を挟めば涼しいよ」と教えてくれて、ほおおおおお、となった夜でした。
お着物も浴衣も、これからもっと楽しみたい!
よそものだけど、大好きです。
何百年も続く日本の伝統をお裾分けしてもらえる、京都の「ちょび体験」

ライター・エッセイスト
佐藤友美(さとゆみ)
PROFILE
ライター・エッセイスト。1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経て、ライターに転向。現在は、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆する。
著書に『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)『書く仕事がしたい』(CEメディアハウス)『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)など。
2025年夏より、京都と東京、2拠点を行き来する。