「チビ、デブ、ハゲ。三拍子揃った彼が大好き」。
90年代にオンエアされたバラエティ番組『紳助の人間マンダラ』に「モテない君」という名物コーナーがあった。知る人ぞ知る、「モテない君」常連出演者だった〝絶叫告白男〞が、海鮮居酒屋「馬場(ばんば)」を創業した「馬場(ばんば)くん」こと、馬場信介(ばば・しんすけ)さんだ。残念ながら2011年、馬場くんはこの世を去ったが、モテないままで生涯を閉じたわけではない。
馬場くんと心底愛しあい、ともに生きたパートナーが、今「馬ん場」で包丁を振るう外山路容(とやま・みちよ)さんだ。

同窓会で再会、
やさしさに惚れる
外山さんは故人となった馬場くんを、ノロケてはばからない。2人は同じ中学校に通う間柄で、卒業後は疎遠になっていった。41歳、同窓会で運命の再会を果たす。離婚してシングルの身になっていた外山さんの電話番号を聞いてくる男子は何人もいたが、実際に掛けてきたのは馬場くんだけだった。
「同窓会で再会した夜から彼が亡くなる日まで。私が海外出張のとき以外、馬場くんに会わなかった日はありません」。
馬場君はおしゃべり上手で、マメだった。アパレルメーカーでデザイナーをしていた外山さんのもとに、仕事上がりの馬場くんは毎日会いに来た。やさしさ、懐の広さに惚(ほ)れた。つきあうほどに、外山さんは馬場くんに夢中になった。
おまかせの仕入れで
ネタ盛りのいい海鮮丼
外山さんは仕事を辞め、「馬ん場」を手伝うようになる。プライベートでは甘い馬場くんだが、店に入れば「親方」と「弟子」の関係だ。負けん気の強い外山さんは、怒鳴られるたびに親方の技術を学んだ。
馬場くんが亡くなったのは2011年。体調不良で病院に行き、帰らぬ人になった。できる範囲で店を続けよう、親方しかつくれないメニューはやめればいいと腹をくくって、外山さんは厨房に立った。
「そしたらね、私らがつくれないメニューはひとつもなかったんです」。

経営者となった外山さんにとって、ギャンブルのように毎日は刺激的だ。
「朝、中央市場の仕入れで、魚屋さんに無理やり買わされてしまうの。ほら、今日も甘海老を1箱注文したのに、気づいたら3箱も車に積んであってびっくり」。
その結果が、あふれんばかりにネタが盛られた海鮮丼だ。冷蔵庫がからっぽになるまで仕入れた魚を売り切ると、ギャンブルに勝った気がしてうれしい。

「親方と馬場くん、どっちにも会いたい。『馬ん場』をやるだけやってみて、経営があかんくなったら、馬場くん……ううん、親方も許してくれるかな」。
親方として、恋人として。「モテない君」だったはずの馬場くんは、こんなにも愛されている。外山さんの思いを知ってか知らずか、店内いたるところに飾られた馬場くんの写真、どれも笑っている。

馬ん場
TEL
075‐313‐0567
ACCESS
京都市南区吉祥院大河原町171カドノハイツ103
最寄りバス停
桂大橋、吉祥院宮ノ西町
営業時間
11時45分~14時、18時~21時半
火、木~日:11:45~14時、18時~21時半
水:11:45~14時
定休日
月曜・水曜夜