ライター・エッセイストのさとゆみ(佐藤友美)が書く「京都人じゃないからこそ感じる京都の魅力」。 京都と東京、2つの都で2拠点生活をする、京都歴1年の新参者が送る連載「よそものだけど、大好きです」第7回。
京都にくるたび、そしてこの連載を書くたびに、「京都って素敵な場所が多いなあ」と感じる。
毎回、毎回、感じる。
するとなにが起こるか。
東京に戻ったときに、「ああ、また早く京都に行きたいなあ」と思うようになる。
京都だったら、小商いの素敵なお店がいっぱいあるのになあ。
京都だったら、店主との距離が近いご飯やさんがあるのになあ。
京都だったら、ランニングしていても楽しいのになあ。
京都だったら、京都だったら……。
そんなふうに考えていると、東京にいても「心あらず」のような気がして、地に足がつかない。
まるで倦怠期のカップルのようだ。
慣れや飽きのようなその倦怠感が、東京での生活を端のほうからくすませていく。
まず、家が驚くほど荒れ始めた。
持ち主の気持ちがこもっていないことって、家のほうでも ”気づく” のかもしれない。ちょっとずつ、家そのものが元気を失ってきたような気がする。
と、一瞬スピリチュアルっぽい書き方をしてしまったけれど、なんのことはない。私の東京での生活が、京都でのソレに比べて雑になってきているのだ。
大量の服、大量の本、大量の食器に囲まれた東京の生活は、気を抜くとすぐに散らかる。モノの扱いもぞんざいになる。
そんな私の「雑な生活」が、東京の家を少しずつ腐らせているのだと思う。
それに気づいてからは、東京でも、なるべくモノを減らすように心がけた。必要最低限のモノしかない京都の家とまではいかないけれど、あってもなくてもいいものを買わないように気をつけるようにした。
休日に、お風呂とお手洗いを掃除した。
エアコンの業者さんにきてもらい、カビとりをしてもらう。
カーテンを洗い、本棚のほこりをとる。
朝は窓をあけて、部屋に空気を通す。
京都では必ず飾るお花を、東京にも。
以前は電車でしか移動しなかった東京の街を、京都と同じように、自分の足で歩いてみるようにした。
すると、「チェーン店しかない」なんてことは全然なくて、東京にもちゃんと、個性的な店があるし、人と人の距離が近い店もある。
私がこれまでちゃんと見ていなかっただけで、東京にも、そこに生きる人たちの「息づかい」がある。
四季もあれば、音もあれば、ここだけの色も匂いもある。
今年の春は、いつもいく道の一本先に、人通りの全然ない桜並木を見つけた。
近くに、こんなにも美しい道がある。
こちらが知ろうとすれば、扉は開く。

「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」
ならぬ
「京都をたずねて東京を知る」
をしているような気持ち。
よそものの京都も、長い付き合いになった東京も。
これからも、好きでいられますように。

ライター・エッセイスト
佐藤友美(さとゆみ)
PROFILE
ライター・エッセイスト。1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経て、ライターに転向。現在は、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆する。
著書に『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)『書く仕事がしたい』(CEメディアハウス)『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)など。
2025年夏より、京都と東京、2拠点を行き来する。