SECOND HOUSE思い出の一皿
ハンケイ500m セカンドハウス応援団!
京都で青春を過ごした世代にとって忘れられない場所と味があります。
友や恋人と食べながら語り合ったまるでもう一つの自分の家。
SECOND HOUSEを愛してやまない面々に思い出を振り返ってもらいます。
私とセカンドハウスの付き合いは長い。本気で自分の第2の家だと錯覚していた時期もあり、友人をよく招いては、私が薦めるスパゲティやケーキ、ドリンクを、割り勘で食べさせていた。京都にセカンドハウスのファンが多数いることは認識しているが、私ほどセカンドハウスを愛するものはいないだろう。
ほぼ全メニューを制覇したし、今はもうない店舗も含め、全店をまわった。なにせ自分の家なのだから、当然と言えば当然。私になんの連絡もなく、味が変わったり、スパゲティの具材が変わったり、量が減ったりしたら、すぐ愛を込めて投書した。クレーマーと思われないように、丁寧に、文章を練ったものだ。それでも、セカンドハウスのオーナーが、こんな私のことを知ってくれる機会はないと諦めていた。
それがある日、最寄りの某信金でオーナーがハンケイを手に取り、この本に載るにはどうしたらいいのか、と尋ねてくれた。即刻、信金マンが私に連絡をくれ、私とオーナーの夢の対面が実現したのだ。私は自分の家のオーナーと会うのだから「緊張しなくていい」、と言い聞かせて、飛び出しそうな心臓を押し込め、スキップしたり走ったりしながらオーナーのいる事務所に向かった。
会ってからは何を話したのか、正直覚えていない。とにかくどれくらい私がセカンドハウスを我が物として利用していたかを語り、好きなメニューを1つずつ挙げて、何が素晴らしいのかを語ったように思う。オーナーは終始笑ってくださっていた。
学生時代、友人にしつこく言い寄ってくる男に、頼むからもう去ってくれ、とキッシュパイを食べながら説得したこともある。卒業式には袴を着るかワンピースにするのか、話がもつれ3時間もアーモンドオーレで粘ったこともあった。この店のたらこスパゲティ以外はたらこスパゲティではない、と断言する息子と何十回もたらこスパゲティを食べに行った。私の人生の何気ないワンシーンに、これほどまで色濃く残る店があるだろうか。瞼を閉じれば、あの日のあの想い出が甦る。
セカンドハウスの好きなメニューをひとつ選ぶなんて、100時間かかっても無理だ。今、「この瞬間」に限定して、食べたいものをひとつだけ選ぶことにする。白いクリームに浮かぶ小エビとベーコンときのことコーンが美しい、セカンドホワイトソース!粉チーズをかけても最高だ。今月5回目だけど、今から食べに行くことにする。
ハンケイ500m 編集長
円城新子
PROFILE
立命館大学卒業。地元京都の出版社企画部チーフを経て2011年に出版・企画制作会社を立ち上げる。2013年株式会社ユニオン・エーとして法人化。クライアントとの共作コンテンツを手がけながら、無料である価値を存分に発揮できるフリーマガジンを編集発行。人々の多様な価値観、普遍性のあるテーマを、オリジナルな形で論理性を持って各種メディアにアウトプットし、発信する。『ハンケイ500m』 編集長、『おっちゃんとおばちゃん』編集長 、『ハンケイ5m』編集長、京都新聞社共同WEBメディア『ハンケイ京都新聞』編集長 、KBSラジオ『サウンド版ハンケイ500m』パーソナリティを務める。
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