ハンケイ500mおすすめカフェ PUGOS CAFE GALLERY
小説から生まれるハーブティー
『ハンケイ500m』ファンが楽しめるカフェ「PUGOS CAFE GALLERY(パゴス カフェギャラリー)」。こちらでは、短編小説をもとにしたオリジナルハーブティが楽しめます。
雨の季節が過ぎて、日差しが強くなってきた。朝からセミが鳴き始め、ノースリーブのワンピースを夏物の衣類整理箱から取り出した。白地にひまわりのプリント柄。今年初めて、素足にサンダルを履いた。また、夏が来る。
大学に入学して、この街に来て以来、夏には故郷に帰らないでいる。毎年、夏休みには、卒業後に就職した今の会社でアルバイトをした。先輩に、両親の友人がいた縁で知った会社であった。父も母も大学時代、この街にいた。
—あなたも、お盆には帰省しないのよね。
先輩と両親は、同じ大学の広島県人会で知り合ったと聞いている。ただ、先輩は広島市内の出身ではなく、両親はどちらも市内で生まれ育った。
仕事終わり、先輩に誘われて食事に行った。食事中は取り止めなく、仕事や流行の話をしていたが、お酒の時間となり、いつしか大学時代の両親の話になった。
—すごく仲の良い二人だったから、地元に帰って結婚するのよね?って気軽に聞いたのね。
父も母も「結婚はできない」と即答したらしい。この話になるまで、二人が「被爆二世」ということを忘れていた。私が夏に帰省しない理由。原爆記念日からお盆まで続く、夕凪の街の暑く重い日々。両親もそうだったのだろう。祖父母が被爆者であった。父も母も健康ではあったが、かなり悩んだらしい。愛しあって結婚しても、子どもへの遺伝が心配だったのだ。
—医療も昔とは違うって、二人の結婚を勧めたの、わたし。あなたが健康に産まれ、育っているのは、嬉しかった。暑中見舞いや年賀状、毎年楽しみだったよ。
この人がいたから、私は生を受けたのだ。思わぬところに、私を愛してくれた人がいる。
今年は実家に帰ろう。
川沿いを抜ける風。爽やかな夏の匂いがした。
文・芹澤 卓/コピーライター。
PUGOS 代表。左京区一乗寺、曼殊院通り沿いに、カフェギャラリーを開業。ギャラリーへの出展者募集中。
PUGOS CAFE GALLERY
TEL
090-8524-8504
ACCESS
京都市左京区一乗寺宮ノ東町17番
最寄りバス停
一乗寺下り松町
営業時間
12時~19時(週末バータイムあり)
定休日
月・不定休
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