QUESTION’s people
京都信用金庫が運営する施設QUESTIONの8階にある、コミュニティキッチン「DAIDOKORO」。いったいどんな場なのだろうか?「DAIDOKORO」を率いる前原さんに話を聞いた。
コミュニティキッチンという言葉を初めて聞く人もいるだろう。地域・家族・会社、あらゆるコミュニティにおいて、食を通した豊かな交流が生まれる場だ。QUESTIONの開設と同じ2020年にコミュニティキッチン「DAIDOKORO」は始まった。
DAIDOKOROを運営するのは株式会社Q’sだ。Q’sの代表取締役は、QUESTIONの立ち上げに関わった株式会社ツナグムの田村篤史さん。Q’sの取締役には、京都信用金庫の理事長、老舗の八百屋、食べ物つき情報誌を発行したメンバーといった、ユニークな経歴の人物が並ぶ。
話を聞いた前原祐作さんはQ’sの取締役のうち最年少で、現在、京都大学に在学中だ。前原さんはDAIDOKOROの店長として、日々奮闘している。
地方都市の個性が、世界を多様でおもしろくする
前原さんがコミュニティキッチンに関心を持つようになったのは、自身が世界と日本の各地で見聞してきたものの影響が大きい。上記写真脇のブロフィールに書ききれないほど、精力的な活動を重ねてきた前原さん。カンボジアでの小学校建設、アイルランドへの留学、ヨーロッパでの放浪旅。そして、東日本大震災を経た宮城県・女川町(おながわちょう)を訪れた経験……。
「スペイン・バスク地方にあるサンセバスチャンは人口に対するミシュランの星の数が世界一になったことがある街です。どの都市にも個性があります。個性的な地方都市がたくさんあるほうが、世界は多様でおもしろくなる。そう感じたんです」。
前原さんは京都に戻って、あらためて「京都という地方都市」のもつ魅力に気づく。
「山、海、畑といった環境。調味料、日本酒、豆製品といった産品。なにより、京都で活躍されている素晴らしい料理人たち。これが京都の魅力だと気付きました」。
また同時に、海外にあるコミュニティキッチンの存在も知った。自宅でも飲食店でもない場所を、メンバーが共有する。利用者は食材を持ち込み、料理をして、仲間たちと作った料理やレシピをシェアして楽しんでいるのだ。
食という魅力をもつ京都にそんな場があればどんなにおもしろいだろう……。そんなふうに考えた前原さんにとって、DAIDOKOROの立ち上げに関わることは自然な流れだった。
「今夜、なにを食べよう」で食への関心を高める
DAIDOKOROは、キッチン付きの貸しスペースとして利用でき、料理教室や試食会、イベントなどに活用されている。目指すのは人をつなぐ場。だからこそ、前原さんはよりコミュニケーションが生まれやすい仕掛けづくりに尽力する。飲食物の持ち込みも、特別メニューの注文も相談可能だ。
「『参加者同士が一緒にキッチンに立ちたい』といった要望にも、企画から対応します。普段は真剣な表情で働いている経営者の方々も、懇親会のおいしいものの前では顔がほころぶんです」。
一緒に料理をして「おいしい!」と言いながら食べる。そんな体験から食材や料理に興味が生まれ、食に対する関心も高まる。
「食べることについて、もっとみんなが考える時間が増えればいいと思うのです。ちょっとでも考える時間が増えれば、飲食店や料理人、生産者や食文化への関心が生まれる。でも、大それたことじゃなくて、『今夜、なにを食べよう』といった、小さなことからでいい。食について考える人が多い都市に、文化が栄えていくと思います」。
「食」を核に、みんなが集い、ともに食べることで人がつながる。DAIDOKOROは京都で新しいコミュニケーションを生むための挑戦なのだ。
株式会社Q’s(キューズ)取締役 DAIDOKORO 店長
前原祐作(まえはらゆうさく)さん
PROFILE
兵庫県宝塚市生まれの26歳。京都大学教育学部に入学し、人力車の俥夫(しゃふ)として4年半、京都の魅力を伝える仕事をする。カンボジアに小学校を2校建設。アイルランド留学や宮城県女川町を訪れて地域経済・食に興味をもち、2020年DAIDOKOROの立ち上げから関わり現職。大学では哲学を専攻し、現在も大学在籍中。
毎月9日開催!
キッチン開放DAYで、第三の場所を実感!
食でいろいろな人が交じりあうコミュニティキッチン「DAIDOKORO」では、毎月9日(日曜日と重なる場合は8日)に無料開放を行っている。さっそく6月8日(土)に編集部も訪問した。「まるで公園のような感覚で、キッチンで遊んで、つながってほしい。自由に過ごしていってくださいね!」と前原さん。QUESTIONの8階は眺望も抜群。次の9日は、ぜひ気軽にのぞきにいってほしい。
みんなで梅しごと
和歌山の青梅で梅酒作り。瓶と焼酎、氷砂糖は持参。費用は梅の代金のみ。「こういう場所がほしかった!」と参加した主婦や若い女性たち。この先もキムチや味噌、アンチョビや栗の渋皮煮など月替わりで開催予定。
軒下青果店
京都で大正末期に創業した青果販売店「西喜商店」が展開する、無人の青果販売ブース。
美瑛町マルシェ
龍谷大学3年生がキッチンで腕をふるう出来立ての「美瑛豚ハンバーガー」。他に美瑛きなこ蜜や美瑛アスパラガスの試食も。
株式会社Q’s社員/コミュニティマネージャー
佐藤宇宙(さとうそら)さん
PROFILE
東京・八丈島出身の24歳。入社2年目。立命館大学大学院食マネジメント研究科2年(休学中)。アルバイトを経て入社。人や食材と出会うことで、人生の豊かさを実感する日々。料理・もてなし好きは民宿を経営する祖母譲り。
株式会社Q’s社員 CAFÉマネージャー/パティシエ
チョン長谷川(はせがわ)ジャスミンさん
PROFILE
北海道・小樽出身の22歳。立命館大学食マネジメント学部卒。高校時代に製菓、大学で経営管理を学び、今春新卒入社。1階カフェと8階DAIDOKOROの運営に携わる。「お客様からいろいろなことを教わって、日々充実です!」
QUESTION’s EVENT REPORT
『第3回 学防災 まなぼうさい』
5月26日、第3回となる「学防災(まなぼうさい)」がQUESTIONと京都市庁舎前広場で行われた。「楽しく防災に触れる」をコンセプトに、QUESTION1階では、被災で汚れた写真を洗浄する取り組みの紹介や、東日本大震災をきっかけに家族の笑顔を描く作家・小林憲明さんによる作品展が開催。4階では映画「生きる」の上映会、7階ではチャリティ歌声喫茶、京都教育大学吹奏楽部による演奏会が行われた。また、京都市庁舎前では、カードゲームを通じて防災について学ぶ子ども向けブースや、保存食の販売、地震体験車などさまざまなコンテンツで、一帯は終日大盛況だった。
QUESTION
TEL
075-585-4190
ACCESS
京都市中京区河原町通御池下ル下丸屋町390-2
最寄りバス停
河原町御池
営業時間
19:00〜26:00
定休日
日・祝
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