自分たちが生きていく場所をつくりたい。
自分たちが生きていく場所をつくりたい。 グレーの瓦屋根にガラス窓、いわゆる京風ではなく、レトロさを残してナチュラルな雰囲気に改装された町家。乾いたハーブ、ガラス蓋の瓶たち。カーテン越しにやわらかな光が差し込む。木製のテーブル、ひとつひとつ違う形の椅子。棚の上には見たことのない形のガラス作品。またとないセンスで選び抜かれている。 さあ、ゆるりと時間が流れる和風の中庭を眺めながら「雪肌美人」をいただこう。ハーブティを味わうのに心地よい空間、たま茶は完璧なロケーションだ。
価値観を根本から疑う
放浪の終着点は京都 ハーブティ専門店、たま茶を営むのは西山善喬(よしたか)さん、珠日(たまひ)さん夫妻だ。 小さいころから研究者志望で、東京工業大学大学院で生物物理学を専攻していた善喬さん。進路を考えるなかで「このまま外の世界を知らずに、研究の道に進んでもいいのか?」と疑問を感じていた。
大学院2年の夏、思い切ってスウェーデンへ旅に出た。短期集中講座で、芸術学校で木工について学ぶ。 「価値観がゆさぶられました。そこで過ごすみんながすこやかで、身の丈にあった暮らしをしているようだった。自分はどうやって生きていこうか、根本から疑ってみようと思いました」。 24歳からの3年間を、定職に就かずに見聞を広める放浪に充てた。カナダの森を歩き、三重で農業をし、千葉で古民家を改築し、沖縄・小浜島でキビを刈った。 世の中の流れに乗れない葛藤と戦いながら、善喬さんがスーツケース1つでたどりついた終着点が京都だった。
一方の珠日さんは京都生まれの滋賀育ち。吹きガラス作品創作のかたわら、ハーブティ専門店で働いていた。友人宅でのごはん会で2人は出会った。
2年かけて町家を改築
納得が調和した心地よさ 「自分たちが生きていく場所をつくりたい」と願う2人は、西陣に南向きの町家を見つける。2年間かけて、手先が器用な善喬さんが改装。アンティークの家具や資材を選び、ときに友人や職人に助けを得て納得のいくように作り上げた。
「家、ハーブ、ガラス作品。いろんな要素を調和させるのが好きです。ハーブティは、薬草の個性をブレンドするのがおもしろかった」と話すのは珠日さん。 そう、「調和」はたま茶を理解するキーワードかもしれない。現実的な善喬さんに対して、おおらかで発想が豊かな珠日さん。珠日さんが想像力で合わせるハーブティ、販売方法を考えるのは善喬さん。納得がいくまで突き詰める姿勢は、夫婦2人に共通している。 2人の個性が絶妙なバランスで組み合わさっているから、たま茶は格別に心地がよいのだろう。
「ハーブティのための完璧なロケーション」は、個々が納得のいく人生の選択を重ね、お互いの個性を認めあった、調和の結果だ。これからも時間をかけて、たま茶は熟成していく。
たま茶
TEL
075-201-3548
ACCESS
京都市上京区上長者町通日暮東須浜東町448
特集バス停
大宮中立売
営業時間
12時~18時
定休日
不定休