オレのライブを見に来いや
「人間として生まれた以上、自分にしかできないことをやってほしい。だから、オリジナルの音楽がいちばんいい。ミュージシャンをたきつけたり、おだてたり、怒ったりして、自己表現に向かわせるのが自分の仕事なんだ」。 このライブハウス・ネガポジに育てられたと感謝する京都のミュージシャンは多い。その理由は、表現について熱く語るオーナー、山﨑ゴローさんによるところが大きい。
小学生でバンド活動
音楽業界から離れられない
東京出身の山﨑さん、住んでいたのは目黒と世田谷。裕福な友人に囲まれ、小学生でバンドを組んだ早熟さだ。中学ではビートルズとクイーン、クラシック。高校でレッド・ツェッペリンとジェネシス、イエス。高校3年の頃にはジャズ・フュージョンに傾倒。進学した大谷大学ではフュージョン・ソウルと呼ばれる黒人音楽に夢中になった。 音楽に熱を上げすぎて、大学卒業に5年かかった。
借金を返すために、卒業後はホテルマンとして働いたが、1年半で飽きた。26歳、大学のときバイトをしていた北山のジャズスポット「ラグ」のマスターに再会して意気投合、木屋町三条の新店の立ち上げに誘われた。 「すぐに『やりたい』と思った。親を泣かせると思ったけど、僕はただの音楽バカ。音楽業界から離れられなかった」。
7年後、ラグの店長を勤めたのち、33歳で独立。烏丸丸太町に「オリジナルを作り始めた未完成なミュージシャンたちとからめる場」としてネガポジを開いて19年。52歳で今の場所に移転、店長は「好きにやれ」との言葉とともに、若き次世代のエースに譲った。2019年には山﨑さんに感謝するミュージシャンたちが集結、ライブハウスのおやじ30周年を祝った。
「売れるのはたまたま」
現役のミュージシャンとして 冒頭の言葉のように、山﨑さんの表現にかける思いは人並みならない。「よりよい表現者を増やしたい。日本の芸術文化の発展に貢献する『ハコ』でありたい」と熱い言葉を連ねる。 いい表現ってなんだろう。迷えるミュージシャンに必ずかける言葉がある。「オレのライブを見に来いや」。山﨑さんは表現太郎の名でステージに立つ、現役のミュージシャンでもある。歌詞を書き、ギターを弾き、歌う。表現太郎の魅力は日本人には伝わりにくいけれど、ヨーロッパツアーでは現地の反応に、確かに手ごたえを感じた。
「売れていても売れていなくてもミュージシャンは同じ。むしろ売れてるのは、たまたまだと思う。せっかくこの世に生まれたんだから、誰もやらないことをして生きていけばいい」。 妻子がいないから養う必要がない自分は恵まれていると笑う山﨑さんは57歳。これからもトガった表現者のまま、ブレずに音楽と添い遂げると決めている。
ネガポジ
TEL
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18時~25時
定休日
不定休。※ライブ情報はネガポジHPで要確認