仕事と人生、どちらも大切
ドイツ語の店名「フラウピルツ」は、日本語に置き換えると「きのこ婦人」という意味だそうだ。主役はお菓子であることに間違いないが、不思議な店名の通り、店内にはきのこのアイテムがいたるところに。出迎えてくれたご婦人も丸いきのこヘアだったのには驚いた。 質実剛健な、ドイツ菓子の職人。それが店主、宮下あゆみこさんだ。
「小さい時からデコレーションケーキより、シンプルな焼き菓子が好きでした」。 そんな宮下さんのお菓子の原風景は母親手づくりのマドレーヌ。大好きなマドレーヌを満足するまで食べたいけれど、兄弟がいて叶わぬ夢だった。だったら、自分で自分の分を作ったらいい。小学生の時からの「合理的な」趣味は大人になってからも続き、京都の短大で栄養学を学んだ後は製菓の専門学校に通った。専攻は華やかなフランス菓子。でも、やっぱり惹かれるのは、茶色く地味なドイツ菓子だった。
ドイツ菓子店を経て留学、菓子職人を目指す
専門学校卒業後は、当時京都を風靡したドイツ菓子専門店「グリュックス・シュバイン」に就職。大好きなドイツ菓子作りに従事できた喜びはあったが、働くうちに、ある疑問が込み上げてきた。 「お客さんから『本場ではどうなの?』とよく聞かれたのですが、ドイツに行ったことがないから答えられなくて。ドイツではどんなお菓子がどんなふうに食べられているのか知りたかった」。
30歳を目前に店を辞め、留学制度を使い渡独。現地では見習いとして働きながら職業訓練校に通う日々を送った。 本場のドイツ菓子に触れ、最も驚いたのは大きさだった。日本の一般的なケーキの3倍はある。でも旬のフルーツを使ったり、甘さも控えめだったりと、日本人との味覚の共通点も感じた。今、実際に店で提供している菓子は、大きさ以外は本場とほぼ同じレシピだ。
心の在り方は、お菓子にも表れる
実は宮下さんが、お菓子づくりよりも留学で感銘を受けたことがある。それは「働き方」だ。 「日本では残業して当たり前。でもドイツでは逆で、時間内に仕事ができない職人は能力が低いとされるんです」。 当然の権利として家族や自分の時間を優先するドイツ人の働き方は、今なお、宮下さんが働く上での指針になっている。
現在、週休3日。ゆったりとした気持ちで、自分と家族、そしてお菓子と向き合いたい。週の大半を休むことに葛藤はあったが、現地での経験が背中を押した。 フランス菓子が非日常なら、ドイツ菓子は日常。「食べるとほっとする」。今はそんな客の言葉に喜びを感じる。 「背伸びせず、安心できるものを作り続けることが自分には合っているみたい」。 きのこが出迎える、ドイツ菓子の店は、2021年、11年目をスタートした。
ドイツ菓子 フラウピルツ
TEL
075-712-7517
ACCESS
京都市左京区一乗寺樋ノ口町19-6
特集バス停
一乗寺木ノ本町
営業時間
11時〜18時
定休日
日、月、火