SECOND HOUSE思い出の一皿
ハンケイ500m セカンドハウス応援団!
京都で青春を過ごした世代にとって忘れられない場所と味があります。
友や恋人と食べながら語り合ったまるでもう一つの自分の家。
SECOND HOUSEを愛してやまない面々に思い出を振り返ってもらいます。
セカンドハウスといえば、「ツナトマトたらこ梅干し」である。
初めて見た日はびっくらこいた。ツナの面影はない。トマトもたらこも主張しない。具材が一体化したベージュ色のソースがスパゲティに乗っている。ひと言で言えば、映えない。
だが、ひと口食べると印象が一変する。まろやかなツナ、たらこのひと粒ひと粒、トマトのベースが効いている。プラス梅の酸味のアクセント♪うまいうまい。フォークとスプーンが止まらない。
このツナメニュー、ツナエビやツナトマト、ツナたまごたらこなど展開があるが、どれもツナが良い仕事をしている。私は普段、特にツナを好むわけではないけれど、ここのツナシリーズは大好き。こんなにおいしいのに、他のパスタ店では出会ったことがない。家でも作れる自信がない。きっと秘伝に違いない。
ただセカンドハウスには、大学生の頃おつき合いしていた彼氏にまつわる、苦く酸っぱい思い出がある。
彼は国立大学工学部の学生であった。高校時代にラグビーをしていた経歴もあり、太ももは、当時の私のウエストほど太かった。そんな体型に合う服がなかったのか、単にセンスの問題か、彼のファッションは大体、袖をひきちぎったようなTシャツ(タンクトップ)にヒップラインがゆったりしたストーンウォッシュのジーパン、腰に革製のウェストポーチを下げていた。そんなセンスも含めて彼のことは嫌いではなかった(いや好きだった)が、本人はおしゃれなスポットが苦手だった。
当時、一際おしゃれなスポットとして有名だった出町のセカンドハウスで食事した後、彼は荒れた。「店がおしゃれ過ぎる」とか、「店員が洒落てる」と言い出した。河原町通で怒りだし、今出川通を東へ、鴨川に出ても悪態をついていた。私からすれば、お店は適度に気分がアガるちょうどいい雰囲気だし、店員さんだってTシャツにジーパンの、キャンパスにいそうな普通の男性である。ただ特有のスマートな雰囲気は漂っていたから、今から考えれば怒りの原因は、ひとえに彼のコンプレックスだろう。大学生とはそんなお年頃••••なのかな?
けれど当時の私は悲しかった。それ以来、セカンドハウスは気の合う友人と行く! と決めている。
今、セカンドハウスでくつろぎ、じっくりツナトマトたらこ梅干しと向き合える私は、なんて幸せなんだろう。おしゃれな空間で「おいしかったね」と語り合いながら、友人と過ごす貴重さを、しみじみと味わっている。
日詰千栄
PROFILE
同志社大学入学と同時に劇団そとばこまちに入団。劇団に15年間在籍後、フリーを経て、2014年より演劇ユニット「はひふのか」を役者として共同主宰。演劇では、ニットキャップシアター、スクエア、ユニット美人、下鴨車窓など小劇場演劇の舞台を中心に客演多数。特に、石原正一ショーでは、由紀さおり役として毎公演、語りと童謡のコーナーを担当し、2003年「よしもとrise-1シアター」で劇場スタッフ特別賞を受賞するなど人気を博する。 その他、映画「真夏のビタミン」「いい子」、ドラマ「和っこの金メダル」「ブラザーズ」など出演。また、焼酎亭ワイン名義で落語、平成女鉾清音会の囃子方、朗読、朗読講師も務める。
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