焙煎には正解がないところがおもしろい
千本通沿いに建つ、コンテナボックスのような店。ここに2023年9月、ハワイアンコーヒーのロースタリーがオープンした。真っ白く塗り直された店の主は、出倉直一さん。
ハワイアンといっても、ハイビスカスに彩られて、レイをかけた女性たちがフラダンスを踊るようなハワイアンではない。店の雰囲気は自身の好きなアメリカンテイスト。ハーレーダビッドソンやファイヤーキング、アメリカのヴィンテージ雑貨を愛す店主の「好き」を詰め込んだ店。それが「Joys coffee Roastery」だ。
ハワイのコーヒーに触発されて店を始める
出倉さんは以前、業務用飲料を製造する会社でアイスコーヒーの開発を行っていた。視察や営業で訪れたコーヒー専門店の数は数千軒を下らない。
「メニューを見ればどこの商社から豆を仕入れているか、だいたい見当が付きます」。
そんな海千山千のコーヒーのプロが、とある展示会で衝撃を受けたのが、世界的に稀少なコーヒー「マウイモカ」だった。
マウイ島など世界のほんの一部でしか栽培されていないマウイモカの味を、出倉さんは「香ばしくて、まるでさつまいものような風味」と表現する。このマウイモカに触発され、出倉さんは自分の店のイメージを具体的に描き始める。
飲みやすく、みんなにおいしいと思ってもらえるミディアムロースト。大通りに面した、入りやすい雰囲気のお店に」。
こうしてハワイ各島の希少なシングルオリジンと、オリジナルのハワイアンブレンドを売りにするハワイアンコーヒー店が始動した。
この店ならではのコーヒー体験を提供したい
出倉さんは「コーヒーは正解がないところがおもしろい」と言う。どれくらいの焙煎度をおいしいと感じるかは、人によってそれぞれ。だからこそ、いろんなタイプのコーヒー店が存在するし、コーヒーの流行も生まれる。
加えて、同じ人が同じ機械で同じように焙煎しても、毎回同じ仕上がりにはならない。出倉さんは「おそらく永久に答えは出ない。自分のように何かを突き詰めたい性格の人間には、うってつけの仕事だと思う」と、楽しそうに話す。
「こういう店でコーヒーが買いたい、と思われる雰囲気にしたい」。
それが理想だと、出倉さんは言う。「Joys coffee Roastery」でコーヒーを買うという「体験」を売っているのだ。
「町家や、有名建築家が手がけた空間。あるいはサードウェーブやシングルオリジン専門店。数千軒のコーヒーショップを見た僕がいいと思う店を、お客さんがどう思うのか。それが答えです」。
そう言いながら、照れ隠しに「僕は『かっこいい』より『かわいい』と言われたい年頃ですけどね」と付け加える、かわいい出倉さんなのであった。
Joys coffee Roastery
TEL
070-1745-0020
ACCESS
京都市上京区聚楽町863-22
最寄りバス停
千本旧二条
営業時間
正午頃~18時
定休日
不定休