台湾で人気のYouTuber兼作家の工頭堅(本名・呉建誼Ken Wu)さんによるトークイベントが、9月に堀川新文化ビルヂング2F NEUTRALにて開催された。著作『工頭堅的京都時光』(日本語未訳)の執筆の経緯を語るトークセッションのほか、ゲストを交えた対談も実施。日台の国境を超えて「京都の魅力」に迫るトークイベントの様子を紹介したい。
歩いて出会った京都の魅力がつまった一冊。
台湾の旅行番組で日本の案内・司会も務めるなど、大の親日家として人気を博す工頭堅さん。今回のトークイベントも、台湾から京都に留学中の学生や、府外から駆けつけた大勢のファンの熱気のなか始まった。
『工頭堅的京都時光』の執筆のきっかけについて、堅さんはこう話す。
「京都は外国人観光客に大人気の場所ですが、歴史を知らずに来る方も多い。京都の魅力は、積み重ねられてきた歴史にある。それを知らないのはもったいないと思ったのです」。
執筆にあたり、京都にまつわる書籍や写真集をリサーチ。カメラ片手に、京都じゅうを歩きまわった。
「例えば六波羅蜜寺の周辺は、かつて栄華を極めた平家一門の邸宅が建ち並んでいた場所。他にも、京都は源氏物語や安倍晴明ゆかりの場所など、歴史や物語にちなんだ場所がたくさんあります。歩けば歩くほど、京都にはたくさんのストーリーが隠されている。それを理解したら京都がもっともっと好きになるはずです」。
『工頭堅的京都時光』には、そんな堅さんが歩いて出会った京都の魅力がぎゅっとつまっている。堅さんの次なる夢は、「京都に移住して、現代の京都を書くこと」。まさにそんな思いのアンサー役として、次に京都在住のお2人が対談ゲストとして登場した。
移り住むのにぴったりな街、京都。
最初のゲストは株式会社ツグナム取締役のタナカユウヤさん。2011年より移住プロジェクト「京都移住計画」をスタートし、WEBでの求人掲載や不動産情報の発信、移住検討者向けのイベントなどを通じて、京都への移住を支援している。
タナカさんは、京都市外への移住促進にも力を入れていることにも触れ、「海の京都、森の京都、お茶の京都」と呼ばれる京都府全体の魅力を紹介。「京都は日常生活だけでなく、仕事の最中でもリラックスできる場所がある。住む人にとって非常にバランスのとれた地域です」と、京都に移住する魅力を語った。
堅さんはかつて精華町を訪れた際、「学研都市で交通も便利、モダンな京都」という新たな京都の魅力を感じたのだそう。「タナカさんのお話からも、京都は広範囲に伝統と新しいものが共存することがよくわかりました。次はそのあたりも書きたいです」と、今後の創作への意欲を述べた。
目先の儲けより社会貢献。
それが京都で働く哲学。
続いて登壇した京都府参与の山下晃正さんは、働く場所としての京都の魅力について紹介。「京都には、日本中から一流の職人・技術者が集まって『ものづくり文化』を育ててきた歴史があります。チャレンジしやすく、新しい価値を生み出す環境が育まれているのです」と語った。
ここで堅さんから「京都で馴染むコツは?」と質問が。山下さんは、「京都人は意地悪だ、なんて言われますが、慎重なんです。相手を見極めるのに時間がかかる。一方で、信頼できる人だとわかればオープンに自分を見せる。もし堅さんが意地悪されるようなら、僕のところに相談に来てください(笑)」と答えた。
また、京都には歴史ある企業が多くあることに触れ、「京都で仕事をするコツは、目先の儲けより来年も続くこと。人に喜ばれ、働くことで社会貢献をしていく。それが京都の老舗の哲学です」と、堅さんにエールをこめてアドバイスした。
「今回のイベントを通じて、市内だけではない京都の魅力や、京都の産業哲学など、多くのことを学びました。この素晴らしさを台湾の人にもっと伝えていきたいです!」と、笑顔で締めくくった堅さん。台湾と日本をつなぐ架け橋として、今後どのような京都の魅力を発信していくのか、楽しみだ。
YouTuber、作家、テレビ司会者
工頭 堅さん
PROFILE
1966年台湾生まれ。父はホテルを営み、日本人観光客のツアーガイドも務めた。堅さんも子どもの頃から日本の漫画に親しみ、81年には家族で日本を旅行。高層ビルや新幹線、日本料理を堪能する。広告代理店ディレクターを経てオンライントレンドライター、旅行業に従事し世界45カ国の都市を訪問。現在はYouTuber、作家、テレビ司会者としても活躍。著書4冊。
タナカ ユウヤさん
PROFILE
1984年滋賀県出身。2015年に株式会社ツグナムを創業し、人や企業、地域との関わりを通して、多様な事業者の方々への伴走支援やコミュニティづくり、イベントやプログラムの企画運営などを展開。京都への移住とその先の暮らしをつくる「京都移住計画」は、京都内外の行き来と広がりを生んでいる。
山下 晃正さん
PROFILE
1952年京都府出身。立命館大学理工学部卒業後、京都府入庁。産業推進課長、商工部次長、商工労働観光部長、企画理事等を経て2013年に副知事。2024年3月退任、現在は京都府参与、また京都府が2023年に開所・整備した芸術と技術の融合拠点「アート&テクノロジー・ヴィレッジ京都」の村長として、企業や地域の交流、連携、人材育成等に携わる。
―京都タイムトンネルからの招待状― 台湾人作家の探検の旅
日時
2024年9月29日(日)
15:30 受付開始 16:00 スタート
ACCESS
京都府京都市上京区皀莢町287
堀川新文化ビルヂング2F NEUTRAL(大垣書店2F)
最寄りバス停
堀川中立売