ワインと料理で、個性を高め合う
バルベーラで特徴的なのは、無駄を削ぎ落とし、食材の旨みを際立たせた軽やかな料理だ。ソムリエでもある店主が、自ら提案するイタリアワインと合わせることで、どこか余白のある味わいが、さらに生き生きと輝き出す。
興味のある分野に
邁進した20代
オーナーシェフの古川雄一さんは左京区岩倉の出身。父は大工で、ものづくりが好きな少年だった。北陵高校卒業後は調理師専門学校に進学。日本料理を選択し、老舗の料理旅館に就職したが、さまざまな飲食店に足を運ぶうちに洋食好きに。フォーマルな日本料理よりも、ワイワイ楽しむほうが性格にあった。
23歳のとき、烏丸と西院にあったフレンチレストラン「パリの朝市」に転職。厨房で活躍するも、古川さんの探究心は尽きなかった。次なる興味の対象は「ワイン」。神戸のレストランで出会ったソムリエに魅了されてしまった。働きながら学びたいと考える古川さんは、巨大な地下セラーを持つレストランのサービスに転身し、2年働いた。そののちに古巣「パリの朝市」に戻り資金を貯め、29歳で現在の「バルベーラ」を立ち上げた。
こうして古川さんのキャリアを振り返るとフランス料理が長い。しかし独立で掲げた看板は、なんと門外漢のイタリア料理。なぜならソムリエを取るほどワインが好き、パスタが好き。高尚なフレンチとは違って、イタリアンにはみんなで皿を囲む楽しさがある。なごやかで、自分がしたい店の形だと考えた。
コンプレックスを乗り越え、
手にした「自分らしさ」
「フランスのワインに比べると、イタリアワインはどこか不完全なところがある。だからこそ、何かが欲しくなる」。
そこで、古川さんは腕をふるう。ワインと料理、互いの個性を高め合う食事が「バルベーラ」の真骨頂だ。夏ならば、白ワインやロゼに桃のパスタを、個性のあるグラスにはオリーブフリットを……。イタリア料理は、ソムリエでもある古川さんが自分らしさを表現するのに最適なスタイルなのだ。
実は古川さん、その一方で、当初は本格イタリアンの修行経験がないことに、コンプレックスを感じていた。
「有名なイタリアンの真似をしないと、と思っていました。でもあるとき、お客様から『イタリア料理かどうかよりも、僕たちがおいしいと思うかが大事』と言われたんです。開店から10年ぐらい経って、『今のスタイルでいい』と思えました」。
バルベーラは常連が9割。イタリアワインと古川さんの皿は、組み合わさることでさらなる魅力を放つ。
カウンターに集う常連らからは「古川ワールドだね」と冗談めかしにほめられる。
どの料理にも、ファンがついている。「あの人、喜ぶかな」。いつもの顔を思い浮かべながら、皿を仕上げる。イタリア料理というよりも、古川さんの料理を食べに訪れるのだろう。
バルベーラ
TEL
075-315-3367
ACCESS
京都市右京区西院矢掛町21 シュール西院1F
最寄りバス停
西院巽町、西大路四条
営業時間
18時~22時LO
定休日
月・不定休