姉に新作をスカイプで相談
「姉の万里子は、子育てのためにドイツに戻ってしまいました」。
ドイツで修行してマイスター(ドイツのパン職人の最高資格)をとった万里子アルトマンさんが店長を聞いていた編集部は、肩透かしを食った格好になった。
「今の店長は私、妹の恵美子です」。
腰巻エプロンとTシャツが仕事者の山本恵美子さんは、接客やパンづくりの合間を縫って、取材を受けてくれた。
「自分が店長になって2年半ですが、やっぱりパンづくりは楽しいですよ」
姉妹が揃って
ドイツパンに夢中に
「ベッカライぺルケオ アルトハイデルベルク」、下を噛みそうに長いこの名前は「ハイデルベルク地方のパン屋『ペルケオ』」という意味だ。
園部出身、3歳違いの仲良し姉妹がドイツのパンにハマったのは、2人揃ってだった。ドイツの旅から帰国して、一緒にドイツのパン教室に通い始める。
「いつか、お店を開けたらいいね」。
そんな会話が一挙に現実味を帯びてきたのは、2004年から5年間の姉の万里子さんのドイツ修業だ。本気に火がついた万里子さんは、2007年にゲゼレ(パン職人)の資格を取得、2009年後マイスター試験に合格する。
姉の修行中、妹の恵美子さんは企業勤めのパタンナーとして神戸で8年間働いていた。姉の帰国に合わせて自分も退職、2009年12月、岡崎の地にベッカライペルケオを2人で開店した。
ランチに焼き菓子
2年で店は進化する
「ドイツは食事用の小型パンの種類が豊富だから、作っていておもしろい。『ジャガイモのスープには絶対に全粒粉』『仔牛肉のシチューには、サワー種のアルトシュタットブロート』といった、家庭ごとに組み合わせのこだわりがあるんです」。
ドイツパンの味の多様さを伝えたくて、今年になって始めたランチのソーセージセットには4種類のパンを付けている。ドイツ直輸入のニュルンベルガーソーセージに添えるのは、自家製のザワークラウト。3日間かけて発酵させたキャベツは、酸味がまろやかで後を引く味だ。
この2年で焼き菓子が充実したのも変化だ。自信の作はマンデルエッケ。特製バタークッキーの上に、スライスアーモンドとカラメルがたっぷり載っている。「次のチャレンジはライ麦パンです。新作は、スカイプで姉に随時相談します」。
意欲的に話す恵美子さんは、2児の母でもある。6月に出産したばかりの第2子が工房の隅のベビーベッドで寝ている。
「子育てと両立するために、営業時間は短くさせてもらって。今の自分ができる形で、パンを焼き続けています」
愛する家族とドイツから見守る姉がいて、ベッカライぺルケオに今日もパンは並ぶ。作り手の暮らしとともに、店は進化する。生身の人間が営むがゆえの変化は、店もまた生きていると教えてくれる。
ベッカライぺルケオ アルトハイデルベルク
TEL
075-752-5577
ACCESS
京都市左京区岡崎天王町54-1クリヨン岡崎1F
最寄りバス停
岡崎道、岡崎神社前
営業時間
11時~17時
定休日
不定休