デザートコースなら挑戦できる
まるで隠れ家のような店内で供されるのは、フランス語で皿盛りのデザートを意味する「アシェットデセール」。「Dessert&Wine 西洋茶屋 山本」は今年6周年を迎えた完全予約制のデザートレストラン。月替わりのデザートには、京都らしい和の食材も散りばめられる。
本場フランスで出会った
アシェットデセール
兵庫県の加古川市で生まれたオーナーパティシエの山本智弘さん。中学生の頃から料理が好きで、兄弟全員が食関係の仕事に従事。末っ子の山本さんが選んだ道はパティシエだった。
「本当は料理人になりたかったんですけど、バイト先の料理屋で体験した内臓処理が苦手で。路線変更しました」。
製菓の専門学校を卒業した後は神戸のパティスリーで働き、一通りの技術を習得。そして24歳で、製菓の本場フランスに飛んだ。高校生の時点で「フランス行き」と「30歳で独立」を決めていた山本さんにとって、計画通りの渡仏だった。フランスでは働き口には恵まれず、滞在期限が残り半年と迫るなか、ようやく就職できたのがパリ市内のホテルにあるパティスリーだった。
「当時のシェフがフレンチの巨匠、アラン・デュカスに師事した日本人の方で。フランスのパティスリーの感覚を日本語で教わったことは大変勉強になりました」。
滞在したパリでは初めてのアシェットデセールを経験した。持ち帰って自宅で食べるケーキと方向性が違い、アシェットデセールならば、手を加えた直後の状態で提供できるから選択肢が広がる。
「そういえば持ち帰りのフィナンシェも焼きたてが一番、おいしいなあと」。
独立という目標は決めていた山本さんにとって、「どんな店でなにを提供するのか」が見えた瞬間だった。
コースだからこそ表現できる
パティシエの個性
帰国後もチョコレートが得意なパティスリーやレストランで経験を重ねて、ソムリエの資格も取った。予定通り30歳で独立。上質な和素材を使った、日本発のフランス菓子を追求したい。そんな思いで、京都を独立の地に選んだ。
山本さんのデザートレストランは、京都の板前割烹に倣い、客の反応が見られるカウンターと一斉スタートの仕組みを導入。ベストな相性のワインとともに、コースで一皿ずつデザートを提供する。
「コース料理の後のデザートはいかに軽く仕上げるかが求められます。そのため、表現には限界がありました。でも、デザートだけのコースなら挑戦できる」。
山本さんの次なる目標は、デザートコースを文化として定着させることだ。
「コースでデザートを提供すれば、パティシエの人となりも伝わるはずです」。
山本さんの作る、美しいアシェットデセール。情熱が込められたデザートコースは、デザートというものの新しい楽しみ方を教えてくれる。
Dessert&Wine 西洋茶屋 山本
TEL
080-7744-0631
ACCESS
京都市下京区観喜寺町19-1 七条澤井ビル1F
最寄りバス停
七条壬生川、梅小路公園・JR梅小路京都西駅
営業時間
13時~、15時~、18時~(各回90分、前日まで要予約)
定休日
水・木