ニューオリンズに似て、人が温かい街
レトロなグリーンのタイルが外壁に施されて、美意識の行き届いたカフェは界隈でも目を引く。聞けば、N7 Kyotoは支店で、本店N7はアメリカのニューオリンズにあるフランス料理のレストランだという。いったいなぜニューオリンズのレストランが、七条壬生川にわざわざ支店を? そんな疑問を解くかのように、取材は始まった。
静岡から京都へ
店のために移住
店長の滝景子さんは静岡県掛川市出身。実は、ニューオリンズ在住のオーナーから見ると、義理の妹にあたる存在だ。
「京都に家族旅行に来た姉の夫アロン・ウォーカーが京都をいたく気に入って、いつか自分の店を出したいと」。
アロンさんはニューオリンズで成功した実業家で、料理人かつ映画監督、フィルムディレクターでもある趣味人だ。ニューオリンズと同様に古いものを大切にする京都の文化に共感したアロンさん。2023年、一目惚れして購入したのが、中央卸売市場そばにあるこの古い町家だった。
景子さんはアロンさんと結婚した姉の由起子さんとはひとつ違い。「姉のことが大好きで、小さい頃はいつも姉の後ろをついてまわる子でした」。高校の卒業式の翌日に留学で単身渡米した行動派の姉から、あらゆる面で影響を受けた。
日本とアメリカ、離れても姉妹仲の良さは変わらず、景子さんもニューオリンズをたびたび訪問。ニューオリンズに住む人たちの人柄も好きになった。義兄アロンさんから京都店の店長を託されたのは、そんな関係性があってこそだった。
とはいえ、静岡で歯科助手として長年働き、夫と子ども2人と幸せな家庭を築いてきた景子さんにとって、京都は縁もゆかりもない土地だ。単身での移住・転職は大きな決断だったろうと推察するが、当の景子さんはとても明るい。
「おもしろそう、人生は一度きりだから楽しもうと。仕事に関して、やったことがないことをやりたいと思うタイプです」とカラリと笑う。家族も挑戦する景子さんの背中を押してくれた。京都に移住して、9月でちょうど丸1年になる。
オーナーの想いが詰まった
空間をシェアしたい
「オーナーのアロンには、『儲けよりも、自分の作品をみんなとシェアしたい』、そんな想いがあるんだと思います」。
N7 Kyotoには、細部までアロンさんの想いが詰まっている。日本とフランスのアンティーク雑貨がちりばめられた店内装飾やカトラリーも、すべてアロンさんが自分で選び抜いた。メニューも本店と共通させる。アロンさんの美意識で貫かれた空間は、居心地がいい。
「この辺りはみんな温かい方ばかりで、大好きなニューオリンズによく似ている。
観光客だけでなくご近所の方に好きなだけゆっくりしていただきたいです」。
ニューオリンズと京都。魅力的な街には魅力的な店があり、人がいるのだ。
N7 Kyoto
ACCESS
京都市下京区朱雀宝蔵104
最寄りバス停
七条壬生川
営業時間
11時~19時(フード18時20分 L.O.)
定休日
日