自分のために買いたいケーキ
2019年、ファン待望のパティスリーが誕生した。シェフパティシエは勝本真理さん、ご存じの名店「オ グルニエドール」で経験を積んだ腕の持ち主だ。
自他ともに認める食いしん坊の勝本さんは神戸出身。短大卒業後はケーキ好きが高じ、まず、地元のケーキ屋に勤めた。

街のケーキ屋さんから
フランス菓子の世界へ
神戸市の北区にある地域密着のケーキ屋。そこは、昔ながらのふわふわとした生地とフルーツ使いを得意とする店だった。ひたすらに大好きなケーキと向き合う日々。就職から10年、ちょうど30歳を迎えた頃、次の目標ができた。それは、同じケーキでも異なる世界をもつフランス菓子へのチャレンジだった。
関西の有名店を食べ歩くなかで、すごいと思った店があった。時間が経つと無性に食べたくなる。「思い出すケーキなんです」。自分もこんなケーキを作りたいと思った。
その店は、2018年に閉店した「オグルニエ ドール」。全国から弟子の志願者が集まる名店だ。意を決した勝本さんは、西原金蔵シェフを訪問したところ、「厨房はいっぱいで、入るのはいつになるかわからないよ」と告げられる。同店では販売のスタッフを経てから、厨房勤務。その順番が来るのを待つルールがあった。
実は、勝本さんは同時期に他のパティスリーの内定が決まっていた。片や、憧れの店だが厨房に入れる保証はない。悩んだ結果、3年で厨房に入れない場合は辞める、と決めて「オ グルニエ ドール」に販売スタッフとして入店。販売や教室の補助を経て、厨房のスタッフになったのは2年半後のことだった。
修行期間は10年。古巣で学んだのは、テクニックもさることながら、オーナーパティシエとしての在り方。素材に対しての考え方、時期、すべてに理由がいる。経営哲学を学んだことは、独立をするうえで大きな自信になった。

ケーキに使うのは、
納得のいく素材だけ
ショーケースに並ぶのは華やかなフランス菓子。と思いきや、ショートケーキやシュークリームなど、親しみのあるものが多い。おもたせではなく、自分のために買いたいと思わせるケーキだ。実際、近所の住人にリピーターは多い。
「たとえば国産の栗を使ったモンブラン。自分がオーナーになると、利益率さえ気にしすぎなければ、納得がいく素材を使えるんです。でも、たまにやり過ぎたなと反省することもあります」。
早速、店の一番人気のイチゴのショートケーキを持ち帰った。大きめのサイズに、ついにんまりしてしまう。イチゴと生クリーム、スポンジ。洗練と懐かしさが同居するような味わい。神戸と京都でのパティシエ人生が凝縮した勝本さんのケーキは、きっとご近所さんにとって、時間が経つと無性に食べたくなる「思い出すケーキ」になっているのだろう。

Patisserie Les Moineaux(パティスリー レ モワノー)
TEL
075-746-6092
ACCESS
京都市中京区押小路通衣棚西入上妙覚寺町208-5
最寄りバス停
堀川御池
営業時間
12時~18時
定休日
日・月・火