鉄人28号の正太郎にしびれた
中居ボタンホール店の斜め向かいにある、古道具店西陣ロマンチカの2階の一角が、TOY BOX SASAKIだ。棚いっぱいにひしめくレトロ玩具に、編集部のテンションが一挙に上がる。
「高橋真琴のコーリン鉛筆! なつかしい」、「リアルに料理ができるママ・クッキー、子どもの頃欲しかったやつだ!」、「僕はボルテスファイブの超合金」、「私はめちゃんこ、Dr.スランプアラレちゃん世代です」、おもちゃには、口々に思い出を語り始めさせる力がある。
そんな会話をうれしそうに聞いて、関連するグッズを探しては次から次へと取り出してくれるから、佐々木輝之さんの取材はいつまで経っても始まらない。

好きな仕事をしたい
43歳で独立
1956年生まれの佐々木さんは伏見の中書島出身。京都造形大学(現・京都芸術大学)の前身である京都造形芸術学院を卒業後、店舗の内装を手掛ける会社に就職。22年勤めて、43歳のときに好きな仕事をして生きていきたいと独立を決めた。
子どもの頃から好きだったブリキ玩具に照準を定めた。バブル期の蓄えを一挙にブリキ玩具につぎ込んだ。玩具コレクターの北原照久氏の功績もあり、かつては納屋に眠るガラクタだったブリキのおもちゃが、蒐集家のあいだで高額で取引される稀少なレトロ玩具として不動の地位を確立したのと同じ頃だった。
「ブリキ玩具はもう大量生産されることがありませんから、これ以上増えることがない。骨董じゃないけど世界がある。美術品として価値があるんです」。

客に頼まれて修理
喜ぶ顔が嬉しい
ブリキ玩具のコレクターには「絶対手を入れない新品主義者」と「積極的に手を入れる復元派」に分かれる。佐々木さんはその中間、「最低限手を入れる派」だ。「ブリキ玩具のなかでも、動くものが好きです。原点は鉄人28号のアニメです。正太郎が小型操縦器で巨大な鉄人28号を操縦する姿にしびれました」。
当初、商いは売買専門だった。数年後、客から「親が買ってくれたものだから」と、動かなくなったブリキ玩具の修理を頼まれた。仕掛けが動いたときの喜びぶりは半端ではなかった。佐々木さんは修理も手掛けるようになった。
「ゴジラのブリキのおもちゃは本物の煙を吐きます。脱脂綿に油を含ませて、熱したニクロム線に通すと煙が出る。同じ原理で、ドーナツ型の煙を吐く機関車もあるんですよ」。
電子回路基板を使わないおもちゃなら直す。カバーを外して、作り手が工夫を凝らしたギミックに出会うのが好きだ。汚れを落とし、必要に応じて錆色がかった塗装をかける。きれいになって元通り動くと、再度命を吹き込んだかのようだ。佐々木さんの仕事場、小さな机の上には緑の目をしたブリキ製のゴリラ。両腕が動き出すのを待ちわびている。

TOY BOX SASAKI
TEL
090-8365-0155
ACCESS
京都市上京区大宮通鞍馬口上ル若宮竪町97-1
最寄りバス停
天神公園前
営業時間
11時~ 18時(修理は要予約)
定休日
不定休