「挑戦したのはカカオ豆の発酵、焙煎」
バックパッカー時代の想いを実らせた、
フレッシュなチョコレート
「目的をお金にするなら、あれほどやり甲斐がある仕事はなかった。でも自分しか幸せにならない気がしたんです」。純朴な笑顔でさらりと語るのは、Dari K(ダリ・ケー)のオーナー、吉野慶一さん。慶応大学時代は専らバックパッカーだった。約50〜60ヵ国を旅した彼は、京都大学大学院で東南アジア研究を、オックスフォードでは比較社会政策を学び修士を獲得する。その後は鳴り物入りでモルガン・スタンレーへ。金融アナリストとして活躍した3年後、彼は人生を一変すべく大きな決断をする。

バックパッカーの体験と
金融の仕事から生まれた考え
「カカオ豆の価格が、この10年間で4倍になってるのに、それを作る農家の人たちの生活は何一つ変わってない。4倍金持ちになっててもいいはずなのに」。
仕事でカカオ豆などの商品相場を分析していた当時、吉野さんはある疑問を抱いた。思い返せば、それはバックパッカー時代にアジアのたくさんの農家で宿泊していた頃から芽生えていた。「自分に何ができるのか、真剣に考えるきっかけになりました」。インドネシア産のカカオ豆が、良質でありながらも、認知されていないことに着目した彼は、なんとかして付加価値をつけることを試みる。「インスタントコーヒーと焙煎したてのコーヒーが全く味が違うように、焙煎したてのカカオ豆はきっと美味しいに違いない!と思ったんです」。半ば妄想だったと彼は笑う。

現地でカカオ豆の発酵を教授。
付加価値をつけた真のフェアトレード。
カカオ豆の焙煎から始めようとする吉野さんの決心は、大きな苦労の始まりだった。「5億円かかりますよって機械屋さんに言われました(笑)」。チョコレートは重工業。カカオ豆の焙煎は、通常大手メーカーが広大な敷地に設置した機械で全自動で行う。フランスやイタリアでも焙煎からやっている職人は3人しかいない。しかし世界で前例が無いながらも、文献を探し歩き、試行錯誤の末、自分で焙煎することに成功する。
「約30の村の村長に会って、発酵の仕方を教えながら、一緒に研究しました。向こうでは結構有名人かな(笑)」。カカオ豆をチョコレートにするには、焙煎前に発酵させねばならない。発酵までを現地の農家が担えるよう、吉野さんは徹底的に教授した。「ここで発酵させたカカオ豆が美味しいとわかれば、大手もきっと買いにくる。ただ単に高く買うフェアトレードは違うと思うから」。彼の夢はいつかインドネシアの市場に出店すること。「美味しいチョコの味を、特別じゃなく、日常的に彼らが知ってれば、きっと美味しい豆を作れる」。だから青山や銀座ではなく、1号店は京都の商店街に。「ここなら一般の人が普通に買いにくる。それに京都は美味しいものを発信するのにいいでしょう」。味にうるさい京都人が通う三条商店街。インドネシアのカカオを目一杯生かしたフレッシュなチョコレートはきっと名物になりそうだ。

店名「Dari K」はインドネシア語で「〜から」の意味の「ダリ」とカカオの産地スラウェシ島がローマ字の「K」に見えることから。
Real Taste of Cacao Dari K
TEL
070-5265-6460
ACCESS
京都市中京区上瓦町63(三条会商店街内)
最寄りバス停
神泉苑前、堀川三条
営業時間
11時〜18時
定休日
火(祝日の場合は営業)