ギタリストの表現を広げる
「この間も九州の方がふらっと来られました。なかには試奏せずに購入される方もいますね」。
1999年に開業したロック・サーカス・スクウェア。北は北海道から南は九州まで、雑居ビルの小さな一室に全国から客が訪れる。エレキギターなどとアンプの間につないで音にエフェクト(影響)を与える音楽機材「エフェクター」の制作・販売・修理を手掛ける。販売するのは、すべて、いちから組み立てた自作の商品だ。

オンラインショップはなく、購入は基本、こちらの実店舗のみ。
素人として作りはじめた
エフェクターが仕事に
迎えてくれたのは、オーナーの能勢忠之さん。どうやら作業中だったようで、手には工具を持っている。
向日市出身の能勢さん。高校卒業後はコンピューター関係の専門学校を経て、七条にあった楽器店に就職した。働きたいと思ったのは、ギターが好きだったからだ。ギターは5つ上の兄の影響で始めて、60歳になった今も続けている。当時は、フュージョン、ハードロックなどのバンドブームで、飛ぶように楽器が売れた時代、接客は楽しかった。
しかし、時代が進むにつれて娯楽の選択肢が増えたせいか、楽器店でギターを買う客は目に見えて減っていった。そこで能勢さんが目をつけたのが、探究心あるギタリストにとって欠かせない、エフェクターの制作だった。
当時、エフェクター作りについての情報は少なかった。ようやく見つけた設計図通りに作っても、音が出ないこともあった。能勢さんは、既存のエフェクターを分解して構造を研究、同じものを作るところから始めた。回路図が掲載された本を片っ端から購入し、独学で技術を習得した。全国でもめずらしい、オリジナルエフェクターも作る音楽店として独立したのは35歳のとき。以来、気づけば四半世紀、エフェクターと向き合ってきた。

エフェクターを通じて
音楽に貢献する喜び
「ボリュームの調整で音色が変わるエフェクターは、今の日本ではあまり見かけませんね」。
絵画にたとえるならば、ギターが筆で音が絵の具、そこにエフェクターがあることで豊かな混色が可能になる。ギタリストからすると表現の幅を広げ、音に個性を与えてくれる重要な機材だ。能勢さんへの、プロからの信頼は厚い。
この仕事をしていて、どんなときが一番うれしいですか? と聞いてみた。
「自分は『こうあるべき』と思うエフェクターを作っています。でも、僕のねらいとは異なる使い方で評価されるとうれしいですね。『そんな音の作り方もるのか』と発見があるから。そしてあらためて『自分はなかなかいいエフェクターを作ってるな』って思います」。
能勢さんはちょっぴり誇らしげに答えてくれた。エフェクター作りはきっとライフワーク。これからもギター愛好家を縁の下から支えるのだろう。

ロック・サーカス・スクウェア
TEL
075-352-3324
ACCESS
京都市下京区河原町通松原下ル難波町410 河原町エイトビル2F
最寄りバス停
五条高倉
営業時間
11時~20時
定休日
水