分断が進む世の中を、少しでもよくしたい
住所は「五条高倉下ル六条院公園ブランコ入ル」六条院公園のブランコ奥に、目指すそのうちカフェの入口がある。
「公園で遊んでいる子ども全員が『金平糖ちょうだい』と入ってくることもある。公園の一部みたいな感覚なんだろうね」。
そう愉快そうに話すのは、店の主である浅井琢也さん。質問にはひょうひょうと、どこかとぼけた返事が返ってくる。
「喫茶店の仕事は謎です。謎が解けるまで、とりあえず10年は続けます」。はて……いったい彼は、何者なのだろう。

公園に面した古民家の離れをリフォームし、木のぬくもりを感じるカフェに。
北海道、ケニア、東京を経て
たどり着いた京都の公園
大学卒業後、理科の教師として北海道十勝の中学へ赴任するも、2年で退職。 青年海外協力隊としてアフリカのケニアへ渡り、現地の子どもたちに勉強を教えた。
帰国したのは2年後の1995年。日本はちょうどインターネット黎明期だった。東京のITベンチャーへ就職した浅井さんは、そこで会社の立ち上げから上場までを経験。気づけば25年もの月日が流れていた。
余生のために資産を確保し、早めのリタイアを決めた浅井さんは、会社を辞め、5年前に京都へやってきた。なぜ京都か? なぜ喫茶店なのか? あれもこれも聞きたがる編集部に、胸の内を簡単には明かさない。しかし、ふと口にした「社会をよくしたい」という言葉には、真実味が感じられた。
「普段の生活で、意見の異なる人と対話する機会ってないでしょう?」。世の中の分断は進む一方なのに、考え方の違う人同士がコミュニケーションをとる場所がない。そんな憂いがある。そのうちカフェでは「議論大歓迎」だと浅井さんは言う。
「僕は誰のどんな話でも聞きます。コーヒー代500円もらえるからね!」と、茶化す浅井さんだが、お客さんへの向き合い方は誠実そのもの。浅井さんに話を聞いて欲しくて、毎日のように顔を出す常連も少なくない。

ボーダレスな人々が
好きなことを言い合える場
細かく刻んだホットサンドの切れ端を手に、浅井さんはドアの向こうの公園へ向かう。「鳩と子どもと外国人の信頼を、全力で勝ち取りたい」。冗談めかして言う浅井さんだが、案外、本心かもしれない。
開店以来、60か国以上の国々から旅行客を迎えた。スマホで検索して店を見つけ、ふらりとやってくる外国人に対して、浅井さんは質問を投げかける。そう、ここでは国境を越えた議論も日常茶飯事だ。
「アメリカ人以外の人に『アメリカについてどう思う?』って聞くとすごく盛り上がるね」。
いたずらっこのように笑う浅井さんは、赤い帽子とブルーのシャツがトレードマーク。かわいらしい「くまのパディントン」をイメージしたスタイルだが、いやはや、どうにも食えない(けど憎めない!)パディントンである。

今年の2月、京都シネマなど、京都でも上映される。
そのうちcafe
TEL
090-1767-0126
ACCESS
京都市下京区塗師屋町119(五条高倉下ル六条院公園ブランコ入ル)
最寄りバス停
五条高倉
営業時間
12時〜19時
定休日
無