レバノン料理は合理的
高瀬川沿いの一軒家。オープンするや話題となった「汽[ :]」は、京都ではめずらしいレバノン料理のレストランだ。初めて口にする味わいもさることながら、週前半は朝8時開店で夕方を待たずに閉店。そんな営業スタイルも斬新だ。

ステップアップのため、
フレンチの名店を渡り歩く
店のオープンは2021年、オーナーの長野浩丈さんが40歳の時だった。4人兄弟の長男として亀岡で生まれた。やんちゃだった少年時代、両親の強い勧めもあり、中3から高校を卒業するまで、友人の父が料理長を務めるホテルでバイトを続けた。料理上手な母の影響もあって、昔から料理が好き。両親が忙しい時は、弟たちのために率先して料理を作った。
20歳で就職。長野さんが料理人を志したのは、とても自然な成り行きだった。それからはホテルのフレンチを経て、東京の有名店を渡り歩いた。関西に戻り、出張料理やいろんな形態の店で働いた。食材は必要な部分を贅沢に使い、ソースに凝る。フランス料理について、基本から緻密な調理スタイルまで、多くのことを学んだ。
満を持して五条にある祖母の家の跡地で店をやろうと決めた。でもどんな店を? フレンチ一筋の長野さんに響いたのは、メルボルンから帰国した 歳下の弟からのアドバイスだった。
「レバノン料理がいいんじゃない?」。

レバノン料理でいくつもの
やりたいことを実現する
調べるうちに、ヨーロッパでは軽食としてポピュラーなこと、元フランス領のレバノンにはイスラム教徒が多く、野菜料理のバリエーションが豊富なこと。緯度も日本とほとんど同じで、作物にも共通点があることがわかってきた。あまり前例のないジャンルなのも魅力的だった。
「フランス料理はどうしても高くなる。そうなると、友達に気軽に『来てね』とはいいにくかった。でも、合理的なレバノン料理なら、いろいろやりたいことが実現できると思いました」。
来店しやすい価格、野菜中心でヘルシー、野菜のロスが出にくいレシピ。さらに実現したかったのは、働きやすさだ。
「飲食業界は長時間労働が当たり前。でもそれでは、将来料理人になりたいという人がいなくなってしまいます」。
仕込みは一切妥協しないまま、味と効率を追求した。そうして料理長の西川勇作さんと作り上げたのはこれまでの経験を凝縮させたフレンチとレバノンのフュージョン料理。端正な盛り付けや酸味を生かしたソースにはフレンチが生きている。
やりたかったことを実現しながら、最大限のパフォーマンスを追求する。
「僕らが幸せだと、お客さんはもっと幸せになれると思うんです」
開店以来、みんなが幸せになれる道を模索してきた。そしてその道はいよいよ、定まりつつある。

朝昼注文可のチキンとファラフェルミックス2,300円、不定期で登場のレバノンの赤ワインはグラス1,200円~。
灰色が美しいピタパンには野菜くずを炭化させたパウダーを混ぜ込んでいる。
汽[ki:]
TEL
075-585-4224
ACCESS
京都市下京区木屋町通五条下ル都 市町149
最寄りバス停
五条高倉
営業時間
モーニング8時~9時45分 L.O.、ランチ11時~14時45分L.O.、ディナー18時~20時L.O.(木金土のみ)
定休日
水