親父の作る
このラーメンが大好き
老舗ラーメン店がひしめく京都にあって、一目置かれるのが妙心寺道にある親爺だ。今年で創業41年。どれほど大入り満員になろうとも、商売を拡張することもなく、70歳の片桐修(かたぎり・おさむ)さんを筆頭に、その息子、45歳の和彦さん、その妻聡美さんと、家族経営を貫いている。

深夜のラーメンに救われ
タクシー運転手から開業
ラーメン店を開業するまで、タクシーの運転手をしていた修さん。夜勤で食べたラーメンに救われたことががきっかけとなって、独学でラーメン作りを極める。試行錯誤を繰り返すこと8年がかりで、親爺の秘伝しょうゆスープを生み出す。
草創期、昼間は1人か2人しか客が来なかった日もあった。そんなとき修さんは、「もっとうまいもんを作ろう」と、ただひたすらラーメンに情熱をかたむけた。そんな父親の背中を見て育ったのが、和彦さんである。高校生の頃から、店の手伝いをしていた。
「親父の作るこのラーメンが大好き」という和彦さんは、大学卒業後、いったんは企業に就職するが、数年後、家業を継ぐ決意をする。
「親父は継げともなんとも言わなかった。ラーメン屋は、しんどい仕事ですから。ただ『やるからには10年黙って頑張ってやれ』とだけ」。
一緒に働き始めた当初、和彦さんはよく怒られた。しかし、少しずつ任される範囲が増えて、気づけば21年経っていた。

名店二代目の重圧と
家族で営み、受け継ぐ味
親爺は全国のしょうゆラーメン好きに名をとどろかせる店だけあって、2代目のプレッシャーは半端ではない。大学時代に修さんのラーメンを食べていた若者が、卒業後20年ぶりに来店するということも日常茶飯事の愛されぶりである。世の常で「味が変わった」と好き勝手を言う口さがない客もいる。その一方で「和彦さんが継いでくれたから、死ぬまで親爺のラーメンが食べられる」と心からの喜びの声が、2代目を支える。
今なお厨房に立つ修さんを、和彦さんは尊敬のまなざしで見る。「そばの上げが見事、手際の素早さが違います」。
妙心寺の膝下にあって、山内の人々は親爺のラーメンをソウルフードと絶賛する。メニューは、しょうゆ味のラーメン一筋。滋味なる自家製チャーシューは、スープを惹き立てる。餃子などのサイドメニューは一切ない。「お酢のモノと一緒に食べると、味を取られるから」との理由が奮っている。どこまでもしょうゆラーメンを主役に据えているのだ。
家族経営を貫き、部外者は鍋に触れることはない。しょうゆスープの味も秘伝。週に一度、日曜日の昼だけは手の空いた者から順番に、家族全員がラーメンを食べる。和彦さんが父の作るラーメンを愛するように、和彦さんの子どもたちもまた、ラーメンが大好き。妙心寺のソウルフードは確かに受け継がれている。

親爺
TEL
075-463-0406
ACCESS
京都市右京区花園木辻南町22
最寄りバス停
祇園
営業時間
11時~21時半
定休日
火・水