「いつも、必要とされる女優」
この道一筋30年。
京都が誇る太秦のクイーン。
「長く出ないんですよ。すぐ殺されて、また回想シーンで出て来るとかね(笑)」。一見、近寄り難いほどの美貌とは裏腹に、明るく気さくに語るのは園英子さん。幼い頃から銀幕に憧れ、12歳で子役デビューを果たし、東映俳優養成所で修行を積んだ生粋の女優である。銭形平次、水戸黄門、大岡越前など有名な時代劇にはほとんど出演し、山村美紗サスペンスなど現代劇にも起用されるほどの実力派。
「初めて園英子っていう名前が、タイトルロールに出てくるようになったのは、〝部長刑事〟に出演したときです。すごく嬉しかったのを覚えています」。実に、千人以上もの応募者の中から、オーディションで見事勝ち取った4年間のレギュラー番組。しかし、決して傲り高ぶることなく、どんな役柄にも直向きに打ち込む、彼女の女優業への熱意は、その後もずっと続いて行った。

脚本に書かれているのは
いつも必要な役。
「2月の寒い日、桂川を死体の役で、息が続く限り浮いてて欲しいって言われたことがあるんです(笑)。息の長さには自信があったんですけど、驚いた保津川下りのお客さんが〝おねえちゃん、大丈夫か?〟って声をかけて下さって、途中で止まってしまったり(笑)。まぁ、京都中の川には浸かってるんじゃないかな(笑)」。女優という仕事のキツさを誰よりも認識する園さんだが、それを語る彼女の姿は幸福そのもの。微塵も辛さが見えないことに、感動すら覚える。
芸者、愛人、不倫妻。ある年頃から、その美貌を活かした役として、園さんが多く演じることになった3つである。「私、こういう役柄が多いので、10本中9本は殺されてますよ(笑)。でも、どんな役でも、脚本に必要のない人物は出てこないんですよね。セリフ1つなくたって必要とされる役者でありたい」。園さんが映画村を歩いていると、「名前知らんけど、よう出てるな。見てるで!」と、よく声をかけられるのだそう。「地道に真面目に、1つのことを貫いていると、誰かがきっと見ていてくれる」。園さんは、いつもそう感じ、「園英子と言います! 覚えて下さいね」と、笑顔で応える。

新たな仕事は
時代劇の次世代への継承。
公家、町娘、花魁、など時代劇で数多くの役柄をこなしてきた園さん。そんな彼女に、子役指導の新たな仕事が舞い込んできた。「まだまだ、私が教えてほしいくらいなんですけど。でも時代劇を知らない子供たちに、その時代の所作や言葉遣いを正しく学んでほしいので」。お辞儀の角度、手の間隔ひとつが、身分によって違うのが時代劇。太秦から少しずつ時代劇が消えていく中、オールマイティに役を知る彼女の存在は大きい。「先生、こないだ、また殺されてたなぁ」。子供たちにそう親しまれる園さんには、なんの飾り気もない。太秦が誇る名女優は身も心も美しいのだと感じる。

セリフを覚えるのは、リラックスできる自宅のお風呂が多いとか。
株式会社東映京都スタジオ
TEL
075-862-5052
ACCESS
京都市右京区太秦西蜂岡町9東映京都撮影所内
最寄りバス停
太秦開町