自分がじいさんになった姿が想像できる
革製品が並ぶ店内。売っているのかと思いきや、レザークラフトの「教室」だった。革の香りが漂うフロアの中央には大きな作業台。棚には生徒らによる制作途中の作品がみっちりと収められている。
受け身ではなく、自分で作りたい
オーナーであり、講師を務めるのは滋賀県東近江市出身の西堀誠人さん。前職はCG(コンピューターグラフィック)デザイナー。1976年生まれのファミコン世代で、幼い頃はゲームにどっぷりの日々を過ごした。しかし、多くの子供たちはプレイだけで満足するところ、「自分の手で作ってみたい!」と、その先の未来を夢見た西堀少年。ゲームを彩るCGデザイナーを志し、高卒後は宝塚造形芸術大学に進学した。
在学中にCGのコンテストでグランプリを受賞したことを機にスカウトされ、めでたく長年の夢だったゲーム制作の世界へ。納期に追われるハードワークだが、とても楽しかった。一点だけ心の曇りがあったのが将来像だ。「このペースで、生涯、この仕事を続けることは難しいだろう」。そんな思いがいつもどこかにあった。
その一方で、前々から、趣味のアメリカンバイクに似合う革製品に興味があった。30代半ばにふと、自分で革の財布を作ってみたくなり、レザークラフトの教室を訪れた。革を扱うのは初めてだったが、即座に「楽しい!」と体が震えた。完成までに年単位を要するCGの仕事に対して、革小物ならその日にできあがって持ち帰ることができる。初心者でも上手にできたこともうれしかった。
「これが人生の転機になりましたね」。その時に制作した小さなパスケースは、今も大切にとってある思い出の品だ。

飽きのこないシンプルな作風だ。
楽しさを伝えるためのスクール開校
仕事のかたわら2年ほどレザークラフト教室に通った後に辞職を決意。5年計画の工程を提示し、妻を説得した。
「ダメなら戻ればいいかと思いました。一度きりの人生ですから」。
関東から京都に移住し、6年前に開校した。レザークラフト教室は、先生の作品が吸引力の中心となることが多い。ところが西堀さんの教室は違う。「作る楽しさを伝えたいと思いました。自分が制作で感じた喜びが衝撃的だったんです」。


今では遠くは東北からも生徒が訪れるほどの人気ぶりだ。「うちでは作るプロセスをエンタメととらえています」。楽しむことこそがゴール。だから、いきなり大物のかばんでもいい、作りたいものを作るのが楽しいからだ。一方で、生徒からのどんな要望にも応えられるよう、西堀さんは自身のスキルアップも欠かさない。

手軽な1日体験コースは材料費込みで3,400円~。
CGデザイナー時代には想像できなかった未来。でも今は経年変化で艶を増す革のように、「自分がじいさんになってもこの仕事をやっている姿が想像できる」とほほえむ。作る楽しさを伝える人。それは、喜びの連鎖を作る人でもある。
MAKOTO LEATHER WORKS.
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