京都府にゆかりのある学生を支援する”京都「志」奨学金”。 2025年度の奨学生20人が選ばれ、3月28日に京都市下京区のオムロン京都センタービル内みやこホールで授与式が行われました。この春から大学へ進む奨学生に、京都オムロン地域協力基金の山田義仁理事長が認定証書を手渡しました。そして「今の日本は多くの社会的課題を抱えています。解決が難しい課題ばかりですが、いつの時代でも未来を切り拓き、世の中を変えていくのは若者です。学びたいこと、経験したいことを、大学生活を通じて情熱を持ってやり遂げてください」と激励しました。

公益財団法人 京都オムロン地域協力基金 理事長
山田義仁さん
“京都「志」奨学金”は、公益財団法人京都オムロン地域協力基金が昨年度に創設しました。全国の学生の2人に1人が奨学金を活用している中、大学授業料の値上げや物価高の影響で経済的な困難を抱える学生が増加しています。また、大学卒業後も貸付型奨学金の返済が負担となっています。
このような実態を社会的課題と捉え、“京都「志」奨学金”は見返りを求めない「若者への投資」として、▽給付型で返済不要 ▽他の奨学金制度と併用可能 ▽奨学生の卒業後の就職も本人の自由、という特長を持つ給付型奨学金として運用されています。論文と面接による選考で毎年度20人の奨学生が選ばれ、大学在学の4年間(短大生は2年間)に月額5万円(年額60万円)が支給されます。
授与式では本年度の奨学生を代表し、「全ての人が満足してスポーツに取り組める世界をつくりたい」という志を掲げて筑波大学医学部に入学した﨑山さんがスピーチしました。崎山さんは、怪我に苦しめられた自身の中学・高校時代の陸上競技生活を振り返り「最先端のスポーツ医学を学びながら筑波大学の陸上競技部に所属し、科学的な根拠を基にしたトレーニングを積み上げて箱根駅伝に出走したい。怪我をした学生やアスリートに共感し、より近い目線で治療できるスポーツドクターを目指します」と抱負を述べました。
授与式の前には、昨年度の奨学生に選ばれた1期生が山田義仁理事長、松島陽介理事との対話会に参加。大学で取り組んでいる授業や研究の様子、初めての一人暮らしでの苦労、サークル活動やアルバイトのことなど近況を語り合いました。また式の後は、奨学金の賛助会員企業の方々と奨学生の、和やかな交流会も行われました。

京都「志」奨学金 第1期生
明治国際医療大学 看護学部 松本さん
京都府京丹後市出身の松本さんは、保健師を目指して看護学科で学んでいる。高校時代、友人が児童虐待を受けていると知ったものの、自分が何も出来ないことに不甲斐なさを痛感し、「保健師として誰もが安心して生活できる地域をつくる」ことを志した。
「虐待を経験した人が親になり、今度は自分が子どもを虐待してしまう世代間連鎖を止めるために、保健師として関わることで双方を助けられるようになりたいです」。現在、大学で基礎を学びながら実習授業にも取り組んでいる。
ひとり親家庭で妹がいる松本さんは「私学は授業料も高額なので、これ以上親に負担をかけられません。奨学金のおかげで、すごく助けられています。大学2年生となる今年はさらに専門的な知識を学び、支えてくださる方々の期待に応えたいです」と話す。
故郷の京丹後市が、誰もが安心して暮らせる地域であるように。虐待防止や子育て支援の取り組みをより充実できるよう、多様な人に寄り添う保健師を目指して歩んでいる。

京都「志」奨学金 第1期生
豊橋技術科学大学 工学部 岡本さん
近い将来に発生が懸念される南海トラフ巨大地震は、超広域に甚大な被害の発生が想定されている。岡本さんは「災害時の要救助者の発見のためのヘビ型ロボットの研究開発」という志を抱き、日夜、機械設計学や材料学、制御工学の研究に没頭している。
「ヘビが動く仕組みを応用したロボットは、瓦礫で埋まった狭い隙間にも容易に入ることができます。人を感知するカメラや耐久性を向上させ、災害現場で役立てたいです」と話す。
大学では、国内のロボットコンテストで何度も優勝している同好会「とよはし☆ロボコンズ」にも所属。渉外担当としてヘビ型ロボットの周知活動に注力する傍ら、世界大会優勝を目標に試行錯誤を重ねている。
大学院進学を視野に入れ、ロボットに全力を注ぐ岡本さん。「奨学金のおかげでアルバイトに大きな時間を取られることなく、大好きな研究に全力を傾けることができています。1期生としての自負を持ち、これからも邁進したいです」。未来の防災に向けた情熱は、揺るぎない。

京都「志」奨学金 第2期生
京都府立医科大学 医学部 塩見さん
高校1年でカナダに短期留学した経験から、文化や価値観の違いを尊重する大切さを実感したという塩見さん。インバウンド観光客が多く訪れ、少子高齢化の進展により国内で働く外国人が増えている今、医療現場でも国際化を進めることが重要と考えるようになった。「多言語対応可能な医者となり、地域医療に貢献する」という志は、「国籍や人種を超えて、誰もが安心して医療を受けられるように」という願いが込められている。
「難民として日本に避難してきたウクライナ人女性と知り合い、戦禍の祖国を案じながら、異国の地で生活する苦労を目の当たりにしました」と話す塩見さん。多様な背景を持つ人たちの思いを理解し、それぞれの人生観を尊重する医師になるため、大学でも海外留学を目指す。
「奨学金という形で多くの人たちに応援してもらい、とても勇気付けられています。生まれ育った京都で、多様な地域医療を提供できるよう頑張りたいです」。理想の医療を実現する挑戦へ、最初の一歩を踏み出した。

学業を通しての成長と社会貢献に意欲のある学生を後押しする奨学金制度。返済不要の給付型で、世帯収入などの条件も設けていない。現在50を超える賛助会員や協賛企業・個人が支援し、寄付によって成り立っている。
奨学生の募集、寄付金の受付など詳しくは“京都「志」奨学金”HPへ。
http://kyoto-kokorozashi.com/
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