入口は広く、垣根は低く。
二条駅前のバス停の目の前にそのカフェはある。ノンステップバスから車イスのお客様が降車し、スムーズに入店できるように、「カフェパラン」の入口は充分に広げることができる。フラットで広々とした店内には温かみのある手作りの木のテーブルが並び、カウンターでは、オーバーオール姿の小柄な店主が、ピカピカの大きなエスプレッソマシンでコーヒーを淹れている。


ベトナムの少数民族との暮らしが
見つめさせてくれたこと。
「集団行動は苦手な子でしたね」と語るオーナーの余座潤美さんは、地元の京都を離れたいと九州の大学に通い、さらに日本を離れたいとベトナムに留学。少数民族チャム族に伝わる焼き物を学ぶためだった。陶芸は15歳から続けている彼女のライフワークなのだ。
「リアルなひとりウルルン滞在記でした」。
素朴な素焼きの土器の生産を生業とし、物質的に貧しくも日々を暮らしているチャムの人々と過ごした時間は、彼女自身の立ち位置も定めてくれたと言う。
「滞在させてもらった、両親と8人兄弟の家族が、突然やって来た外国人に色んなものを与えようとしてくれる。人間本来の親切さを知りましたね。あの家族のあり方は、パランのあり方に通じています」。

可愛い部屋のようなトイレが語る
この店の存在意義。
カフェを始めるきっかけとなったコーヒーとの出会いは、皮肉にも、彼女が帰国後に突如として見舞われた病がもたらした。「体が動かせなくなって、何食べてもアレルギー反応が出てしまって」。膠原病の発症で、普通の生活が困難になり、高雄病院に入院。病院の食事以外で医者に唯一許されたのがコーヒーだった。勧められるまま行った「カフェタイム」のコーヒーの美味しさに感動する。
「食べることが怖くなっていた自分でも、コーヒーの美味しさを感じている。あ、また元気になれるかもって」。重度の心身障害者の介護をしていた友人と、「何かしらハンデがある人でも本当に美味しいコーヒーが飲める店」を形にしたのが、カフェパランである。ユニバーサルデザインのトイレも、備え付けの介助ベッドを大工さんの手作りで木製に。飾り棚には蝶々の標本を置くなど、おしゃれで居心地の良い空間にすることを心がけた。
「ユニバーサルデザインのトイレって、機能は備わっていても、無機質で冷たい感じがすることも多いんです。あんまりここには居たくないよねって感じの。やっぱりその逆でないとね」。コーヒー豆やお米、野菜などの食材は、産地や生産者がわかるものを使用する。ドレッシングやシロップも手作りだ。「どこの、どんなものかをわかって選ぶことで、店で使うもの全てに愛情が持てますからね」。
一面ガラス貼りの店の表に小さく書かれた「Thanks&Love」の文字。この店のオーナーが大切にしていることは、結局この言葉に集約される。

カフェパラン
TEL
075-496-4843
ACCESS
京都市中京区西ノ京北聖町24新二条ビル1F
最寄りバス停
二条駅前
営業時間
9時〜17時
定休日
不定休