僕にとってジーンズは「よそいき」
「基本、ずっとジーンズ。息子の婚約時の挨拶にも、ネクタイとビシッと合わせてキメました。ジーンズは作業着っていうけど、僕にとってはよそいきやね」。
東京からジーンズ好きの芸能人が訪れることでも知られる、京都で唯一無二の存在感を誇るアメカジショップ。オーナーの井上和夫さんは1947年(昭和22年)生まれ。6人兄弟の下から2番目で、早くに父を亡くしたこともあり、10歳から兄らとともに炭の配達をして働いた。
ジーンズに代表されるアメリカンカジュアルを知ったのもその頃だ。アメリカ映画好きの兄の影響だった。愛読書は映画雑誌の「スクリーン」で、井上さんも兄から借りては読んでいたそうだ。でも、夢中になったのは映画でなく俳優の衣装。ユニフォームの下からのぞく真っ白なTシャツに心を奪われた。

とにかくジーンズが好き
大好きなアメカジを仕事に
貯めたお小遣いで初めてジーンズを買ったのは12歳のとき。中学卒業と同時に電気屋に入社するが、アメカジ熱は覚めることなく、足繁く通っていたアメリカ衣料専門店「三信衣料」の社長に誘われて転職。ジーンズに対する情熱と知識量を買われてのことだった。
それから15年後、38歳で独立。自身の店「PORKY,s」を構えた。
とにかく、ジーンズが好きと話す井上さん。彼の話を聞いていると「たかがジーンズと思うなかれ」、その世界の広さと深さに開眼させられる。
井上さんは、ジーンズを履く醍醐味は経年による色落ちにあるという。PORKY,sのジーンズはクラシックな縫製で作られた、デニムの「耳」と呼ばれるサイドのラインが美しい。店で扱うジーンズはすべて一度洗って縮ませ、内側にアイロンを当て、きれいに耳が開いた状態にしてから陳列する手間を惜しまない。

白いTシャツの似合う男でありたい
「下は10代、上は70代まで。うちに来るお客さんには、おしゃれでいて欲しい。常連のお客さんには『井上さんから元気をもらいに来た』っていう人もいるね」。
淀みのない快活なトークと御年74歳とは思えない若々しい体。体にフィットするTシャツと、リーバイスのダブルエックスのストレートがよく似合う。
「男はカッコよくないと。常に白いTシャツとジーンズが似合う体でいなあかんねん。もっとも、世の女性が僕をカッコよくさせるんやけどな!」。
自分が店の商品の広告塔。だから、年齢を重ねてもトレーニングで体を鍛え、毎朝、新聞を取りに出る時すらも服装には気を抜かない。これは、子供時代から真摯に向き合い続けてきたアメカジに対する敬意の表れでもある。
ジーンズという永久不滅のファッションによって磨かれた井上さんの美学。冒頭の言葉通り、ジーンズはまさしく、「よそいき」の服なのだ。

PORKYʼs
TEL
075-464-0221
ACCESS
京都市中京区西ノ京中保町54
最寄りバス停
西ノ京円町、北野中学前
営業時間
11時~20時
定休日
水