やりたいことはとりあえず、やってみる
大手筋商店街近くにある3階建てのビル。1階はハンバーガーショップ、2階は英会話教室。そのオーナーであるベリー・ワイエトさんは、ロス生まれのアメリカ人。実は牧師でもある。2度結婚し、合計7人の子どもをもうけたベリーさんのポリシーは、「やりたいことは、とりあえずやってみる」だ。

心の声に耳を傾け
30代で震災後の日本へ
証券マン、自動車の技術者、営業職……。ベリーさんは若い頃からいろいろな職業を経験してきた。「飽き性でね」と笑うが、27歳でがんを患ったことで、「人生で大切にしたいことはなにか」を本気で考えた。
そして始めたのは、牧師になるための勉強だ。同時期に独学で建築を学び、建設業界で起業した。信心と建築の技術をもって、教会を通じてメキシコで家屋の建設や修繕を行うボランティアに参加し、メキシコとアメリカを行き来する生活を2年続けた。
そんなベリーさんが来日するきっかけとなったのは、1995年に起きた阪神淡路大震災だった。「なぜ日本の教会はもっと被災者に手を差し伸べないのか?」と腹を立てたベリーさんは、アメリカで教会のトップを問いただした。すると『では、あなたが日本に行けば?』と提案されたんです」。
かくしてベリーさんはアメリカ人の妻と3人の子を連れ東京へ。当時の日本にはなかった「フードバンク」を立ち上げるなど孤軍奮闘する。当初は東京に住んだが都会になじまず、知人を頼って京都へと移り住んだ。
伏見区の淀に居を構え、新たにフードバンクを立ち上げたベリーさんは、同時に英会話教室を開業。さらには家族を養うため、土日は牧師として関西一円の結婚式場をはしごし、最盛期には年間650件もの式を執り行った。
さらに始めたのは、ニューヨークスタイルのハンバーガー店、コズモズカフェだ。「毎日、自分の好きなものを食べたいから」、理由はシンプルだ。

ハンバーガー店と牧師
どちらも正直な素の自分
家庭にも変化があった。最初の妻は日本になじめず、アメリカに帰国した。その後、日本人女性と結婚し、さらに4人の子どもに恵まれた。今では孫も4人。ベリーさんは人生を振り返って言う。
「聖書の教えでは、人は元来『不完全な存在』。周りの人を気に掛け、弱い人を助ける。自分より相手を大切にし、互いに補い合わなければ」。そうやって生きてきた結果、自然と今につながった。ベリーさんは輪廻転生(りんねてんせい)を是(ぜ)としないキリスト教の牧師だからこそ「やりたいことは現世でやらないと。やりたかったら、とりあえず、やってみる」と、熱を込める。
やりたいことに身を投じてきたベリーさんは、今を生きる人だ。自分の肩書は「めちゃくちゃおいしいハンバーガーを作る牧師です」と、愉快そうに話す。

懐かしい味を求めてあちこち食べ歩いた結果「自分で作るしかない」という結論に至り、コズモズカフェを開いた。
コズモズカフェ京都
TEL
075-200-3845
ACCESS
京都市伏見区平野町59-2
最寄りバス停
西大手筋
営業時間
11時~15時
17時~20時半
定休日
木