もっと! ハンケイ500m
「もっと! ハンケイ500m」は、『ハンケイ500m』本誌で特集したことのないバス停や地下鉄駅の周辺地域をフィーチャーし、多様な価値観を持った人を紹介するコーナーです。今回は、京都市営地下鉄東西線 山科駅のほど近くにあるスペイン料理店「Sobremesa」でオーナーシェフを務める片山織恵さんにお話を伺いました。
野菜のランチが人気の、スペイン料理店。
リトルポテト、オカヒジキ、しま瓜。色とりどりの見慣れない野菜が、ブッフェ台に鮮やかに並ぶ。
ランチ時は予約で満席になることも多い、スペイン料理店「Sobremesa」は、京都市営地下鉄「山科」駅から徒歩5分。三条通に面した北東角地にある。

店名は「食事中に談笑しながら楽しむ時間」という意味のスペイン語。その通りに、客は大いに会話を弾ませながら食事を楽しんでいる。オーナーシェフ、片山織恵さんはこの店にたどり着くまで約30年、「流転」を繰り返してきた。それは目標の実現に向けて、着実にキャリアを積み上げてきた歴史でもある。

頭打ちしている気持ちが拭えない。
料理なら成長できる。
親戚縁者が飲食に携わる商売人だった片山さん。高校卒業後、飲食業への道も脳裏をよぎったが、最初に就いた仕事は歯科助手だった。一番仲が良い友達がしていた仕事を、「やってみようかな」という気持ちで始めたそう。順調に8年が経過したとき、不満こそなかったが、医者の下で立場が変わらない自分に、どこか「頭打ち」になっている気がした。「成長して上を目指せる仕事がしたかった。料理なら、それができるかもしれない」。そう思い立ち、片山さんは数年間食べ歩きをして過ごす。「飲食業界に行きたいのに、私はぜんぜん外食をしていないと気づいたんです。食べ歩くと、驚きの連続でした」。

ある日食べた黒米のリゾットが転機になった。トッピングはホタテ、そして朝堀りのタケノコ。口に運ぶと「どうしたら、こんな味を組み立てられるんだろう」という思いが頭を駆け巡った。すぐにレシピ本を手に入れたが、専門用語や知らない材料名ばかり。「料理を勉強したい」。やりたいと思ったら、まっしぐらの片山さんは、27歳で迷わず、調理師専門学校の門をくぐった。

料理の基礎を学び、京都市内の複数のフレンチレストランで勤めた。年下の先輩に怒られながら、できないはがゆさに涙したこともある。また、料理長に就任した接待専門の店では、一生懸命作っても残されることが悔しかった。さまざまな経験を肥やしにして、片山さんは36歳のとき、今につながる京都市内の人気スペイン料理店にたどり着いた。「新店舗を展開するのが早い、実力派の店でした。いつか独立するときの役に立つ、と思いました」。これまでとタイプが異なるスペイン料理の数々。何もかもが、片山さんには新鮮だった。

ノウハウを学んで独立。
今も抱く「このままでいいのだろうか」
原価計算、人気メニューの開発、スタッフの教育。片山さんはスペイン料理店で、新店舗の立ち上げから関わり、調理だけではなく店舗全体の運営を任された。そこで大きな発見をする。「ある日、デザートの平たいケーキにイラストを描いてお出ししたんです。すると、お客さまが大喜びされた。ただ美味しいものを食べに来られるだけではないと知りました」。意外性があり、心の奥底をくすぐられるようなもてなし。本格スペイン料理の味と、また行きたくなる店づくりを学んだ片山さんは、7年後、誰もが認めるエースになった。そして2020年、生まれ育った山科に念願の自分の店を構えた。
独立5年目。多種多様な野菜が食べられる「Sobremesa」は、客の心をくすぐる独特のランチスタイルが人気を呼び、売上も安定してきた。

しかし、今も「このままでいいのだろうか」という気持ちを、片山さんは抱いている。「安定すると不安になるんです。安定って、自分がそこで止まってしまうように感じるから」。その言葉は、この先も「Sobremesa」が進化し続けることを約束している。
連載シリーズ「MOTTO! ハンケイ500m」とは?
京都市交通局による、地下鉄・バス利用促進の取組「MOTTO!」。後述の『「3つのもっと」を皆の「モットー」に』をコンセプトに、「市バス赤字系統の利用促進」、「地下鉄とバスを組み合わせた移動への誘導」を重点としたさまざまな取り組みを展開しています。
地下鉄・バス「MOTTO!」利用促進プロジェクト とは
https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000342840.html
「3つのもっと」
- もっと周辺部のバスに乗ろう!
- もっと地下鉄を組み合わせて移動しよう!
- もっと沿線地域を活性化しよう!

そんな「MOTTO!」と、京都の多様な価値観を「バス停」を起点に発信してきた『ハンケイ500m』がコラボレーション。「MOTTO! ハンケイ500m」と題して、月1本のWEBコンテンツを発信していきます。
「3つのコンテンツ」
- もっと!ハンケイ500m!
『ハンケイ500m』で特集したことのないバス停や地下鉄の駅を中心に、多様な価値観を持つ人を探索し、ご紹介します! - あの日の登下校
「学生の街」京都ならではの学生グルメを紹介するシリーズ。地下鉄・バスに乗って登下校したあの日の思い出。エピソードを交えて、沿線地域の魅力を伝えます。 - 京都のマイナ~な旅
京都には、まだまだ知られていない素敵なスポットがいっぱい。マイナーな路線・沿線地域をまわり、文化人やアーティストがその魅力をご紹介します。
地域情報誌『ハンケイ500m』に収まりきらない京都の知られざる魅力や、地下鉄・市バス利用で出会える素敵な人やスポットなどを発信。もっともっと、京都の魅力を楽しめる連載シリーズが始まります!
Sobremesa
TEL
075−600−9150
ACCESS
京都市山科区竹鼻竹ノ街道町11-4 石田ビル1
最寄り駅
山科駅(地下鉄東西線)
営業時間
ランチ: 火曜〜日曜 11時半~15時
ディナー: 金曜、土曜、日曜のみ 18時~22時
定休日
月曜日
Sponsored by 京都市交通局