全部、たまたまの繰り返しです
韓国ドラマの影響か、京都の街中にも随分と韓国料理店が増えた。その波は、この御薗橋がある上賀茂エリアにも。2021年7月にオープンした「ハルハル」。名物はステンレス容器に入れられた韓式弁当「トシラ」だ。ほかにも韓国ドラマ好きにはおなじみの韓国料理やお酒が揃う。

女性もひとり入りやすい清潔感のある店内。テーブルのほか、カウンター席も。
キムチも食べたことのない
自分が韓国人の妻に
オーナーの名は金公枝(きむ・きみえ)さん。出身は大阪だ。昔から海外が好きで、特に北米の文化に憧れた。高校卒業後も進学はせず、フリーターをしながらアメリカにいる友人を訪ねた。韓国人の夫との出会いもワーキングホリデーで滞在したカナダだった。部屋をシェアするルームメイトのうちのひとりが彼だったそうだ。
29歳で結婚。34歳で夫の祖国、韓国に渡った。夫がソウルで飲食店を出店することになり、子育て中の金さんも店の手伝いをするようになった。トシラをはじめ、こちらの店で提供されている料理は、日本人向けに辛さをマイルドに調整している以外はソウルにある店と全く同じ内容という。
「たとえば、私が好きなキムチチゲと卵ごはんのように、韓国料理は単品で食べるよりも組み合わせることでおいしくなる。これは長い間、韓国にいたからわかったことです」。
今ではキムチを食べないと1日が始まらないほど好きになったが、実は初めてキムチを食べたのは34歳のとき。さらには「日本で韓国ドラマが流行っていることもまったく知らなかった」と金さん。京都に店を出店した理由も、娘が京都の大学に進学したため。韓国好きが高じての出店かと予想していた編集部は、その話を聞いて意外性に驚いた。

思い通りじゃなくてもいい
自然体で1日1日を楽しむ
英語圏の文化に憧れた少女が、アジア圏の韓国に嫁ぐことに。「全部、たまたまの繰り返しです」。自身の半生を振り返り笑う金さんは、人生の流れに逆らわず、自然体で生きている人物だ。
「日本と韓国の国際結婚で苦労している方は少なくないですが、理解のある夫や家族にも恵まれて自分はラッキーな人間だなと思います。そもそも人生、思い通りなんていくわけない。思い通りに行かなくてもそれはそれでいいじゃない」。
金さんの人生で優先順位第1位は子どもだ。でも2人の娘が大学生になり、ようやく自分の時間ができた。その時々の気持ちを大事にしたいから、御薗橋での営業は10年間で終わりと決めている。
「フットワークが軽いせいか、すぐにどっかに行きたくなるんでね。次はやっぱりカナダに行きたいかな」。
最後に、屋号の「ハルハル」とは、韓国語で「一日一日」を意味する。「一日一日を楽しみましょうという想いで付けました」。毎日、楽しいですか? そう聞くと、「はい、楽しいです」。淀みのない口調で金さんは答えた。

ハルハル
TEL
070-1761-4343
ACCESS
京都市北区大宮東総門口町36-4
最寄りバス停
上賀茂御薗橋
営業時間
8時半~12時、18時~23時
定休日
火& 第3水