「自分のハンバーグ道」
ソースができてから、まだまだ続く挑戦。
ハンチングの似合う体格のいいお兄さんが右に左に、黙々と手を動かしている。どの客席からも厨房が見渡せて、ガラスの向こうには、ソースを仕込む様子も伺える。お客が心待ちにするのは、たっぷりとデミグラスソースがかかった熱々のハンバーグ。
「師匠がまかないで作ってくれたんですけど、衝撃的に美味しかったですね」。店の看板である、このソースとハンバーグは、木屋町と先斗町を結ぶ露地にあるオムライスの名店「ルフ」での修行中に出会った味が原点だ。
独立を見据えて飛び込んだ洋食の世界。師匠から学んだことを尋ねると、「やっぱりちゃんと作るってことですね。本当に忙しいお店でしたけど、手を抜くってことは一切なかったです。後から調味料でごまかそうとしても、余計におかしくなっちゃうんですよね、結局めんどくさいことを惜しみなくやるかどうかなんです」。

突き通す信念と、
地域に合わす流儀。
師匠の教えを胸に、8年前のオープンからずっと、ソースを含めた「ハンバーグ道」の探求が続いている。れっきとした職人には違いないが、それにありがちの、ひとりよがりな頑固さとは無縁だ。ランチの価格設定にしても、メニューの絞り込みにしても、お客様の声を汲みあげて、店づくりに反映させてきた。
「ランチもはじめはもっと高くで出してたんですけどね、やっぱり近所の人に喜んでもらえないと生き残っていけないので。原価率が上がって経営は大変でしたけどね(笑)」。
ソースの持ち帰り販売も、お客様の声がきっかけで始まり、今では多くの人に喜ばれている。でも味については全部自分基準ですね、自分が美味しいと思うものを出してます」。終始控えめで言葉は少ないが、ソースと真摯に向き合ってきた職人のプライドが見え隠れする。
試作を繰り返して季節ごとに選ばれた5種類ほどの完熟フルーツが、他の材料とともに長時間煮込まれ、後に残らないコクと甘味だけをソースにもたらしている。ハンバーグは産地直送和牛のすね肉を店で挽き、つなぎは最小限。必要以上に空気を内包した柔らかさ自慢のそれとは一線を画し、肉のうまさがしっかりと伝わってくる。


まだまだ追求し続ける
理想のハンバーグ。
リピート率の高さがその美味しさを物語っているのだが、ハンバーグはまだまだ底の見えないものらしい。「理想が見えてきてるんです、こういうハンバーグが作りたいっていうのが。それに向かっていきたいんですよね」。
若きハンバーグ職人も今年で41歳になる。「わけわからずやってきた段階から、ちゃんとコンセプト持ってやっていく段階になってきてる気がします。40代楽しみなんですよね」。
眠りにつく間際まで、考えるのは仕事のこと。いつとも知れない理想のハンバーグにたどり着く日まで、まだまだ道半ばのようだ。
グリルデミ
TEL
075-211-7661
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