夫は几帳面な性格
白い窓枠を彩るステンドグラスが目を引く。これは、親戚が営む祇園の老舗喫茶店「ラテン」から贈られたものだ。
店主は松本靖史さん。「グラタンハウス」の前身にあたる「cafe La Vienne」は母の店で、本格的に手伝い始めたのは30才になってからだった。

専門学校の講師から
喫茶店のマスターに
大学卒業後は建築関係の会社で営業を経験。1年半ほどで辞め、手に職を付けようと経理の専門学校に入学したところ、そのまま専門学校の講師をすることに。しかし5年ほどで専門学校が倒産し、喫茶店を営んでいた母親を手伝って、店に立つ機会が増えていった。
その頃バブルが弾けて、お客さんの数が減ってしまった。「なにか武器がないと」。そこで思いついたのが、好物のグラタンだ。専門学校の地下にグラタンが名物の店があり、とてもおいしかったことが印象に残っていたのだ。
「実際に作ってみたら、専門店がない理由がよくわかりました」。グラタンは、とにかく仕込みが面倒なのだ。それでも踏ん張って続けているうちに学生を中心に客が増え、気づけば注文はグラタンばかりに。こうして、「グラタンハウス」は誕生した。

細やかな性分から生まれる、
端正なグラタン
グラタンは表のひさしと同じオレンジ色の器で、木のボードに乗せて運ばれてくる。添えてあるサラダも端正な顔付き。食べる前から、これはきっとおいしいに違いないと確信する。
事実、ホワイトソースはとてもなめらかで、かつ軽やか。食後の胃もたれも一切ない。聞くと、「豆乳が入っているんですよ。女の子のお客さんも多いさかい、くどくないようにしたいなと思って」と、そのワケを教えてくれた。他にも1時間をかけて引く昆布だし、風味づけには西京味噌を使っているそうだ。
秘訣を聞くと、「そんなに必死になって特別なことはしてない」と靖史さんは恥ずかしそうに笑う。でも、中学校の同級生で、接客担当の愛妻・靖子さんによると、「この人は几帳面な性格」とキッパリ。グラタン専門店の看板を掲げて約20年、小麦粉や調味料の分量はいつもきっちりと測る。適当な仕事はしない。その姿勢が料理の姿に、そして味に表れている。
仕込みだけでなく、焼き上がりを待つのにも時間がかかるグラタンは、ある意味、非日常な食べ物だ。
「特性上、お待たせするのは申し訳ない気持ちもありますが、やっぱり焼きたてが一番おいしい。お客さんにはゆっくり過ごしてもらいたいですね」。
グラタンハウスでは窓際の席で疎水の四季折々の表情を眺めながら、焼き上がりをじっくりと待とう。熱々のグラタンをハフハフとほおばる、それこそが贅沢だ。

グラタンハウス
TEL
075-701-2273
ACCESS
京都市左京区下鴨北園町51
最寄りバス停
洛北高校前
営業時間
火・水・木・日:11時半~15時(L.O.14時20分) 17時半~21時半(L.O.20時40分)
土:12時~14時半(L.O.14時) 17時半~21時半(L.O.20時40分)
定休日
月、金、不定休