自転車の美しさはどこまでも機能美。
片岡聖登さんは遊び人だ。コーヒー一杯100円が相場だった時代に、北山にあった高級喫茶店「ひいらぎ」で320円のコーヒーを飲む高校生だったといえば、その生意気ぶりは伝わるだろうか。
「高校の頃は自転車屋を継ごうとは思っていませんでした。ただ、手段としてのモノ作りが好きで。僕が『こういうものがほしい』と思ってもどこにも売ってなかった。たとえば洋服がそうです。だから、ミシンで自作していました」。

「ないものは自分で作る」
片岡家三代の継承
片岡さんは祖父の代に創業した自転車屋の三代目。そのルーツは鍛冶屋だ。
創業者の四郎さんは、アマチュア自転車競技連盟の団体競技の監督を務めた経験がある人物だ。イタリア製の競技自転車では、日本人の体格に合わないと気づく。高度経済成長期の前後は運搬に向く自転車が売れ筋で、大企業はオーダーメイドの依頼をとりあってくれなかった。
ならば自分たちで作るしかない。祖父の四郎さんは、鍛冶屋の血筋か精密な金属加工が得意な二代目、父の保さんと一緒に、オリジナルの競技用自転車をつくりはじめる。そのブランドが、屋号でもある「VIGORE(ビゴーレ)」だ。
「イタリア語で精気、活力という意味です。祖父と父がVIGOREを立ち上げた1970年代、高級な競技用自転車はイタリアやフランスからの輸入が大半。カスタマイズできる日本製は見当たらなかった。東京からもお客さんが来ましたよ」。
手本となったのはやはりヨーロッパ製だ。ランプや金具の継ぎ目。ディティールのデザインがいちいちかっこいい。
「自転車のパーツの美しさって、芸術じゃないんです。自然がそうでしょう? 葉っぱの葉脈には意味があって、その結果美しい。どこまでも機能美なんです」。

移動の道具としての
自転車がかっこいい時代に
学生時代は、スキーに夢中になる。
「遊んだおかげで、優れた道具が遊びをサポートしてくれると実感しました。いい板に乗ると、いい手袋も揃えたいし、いいホテルにも泊まりたくなるんです」。
そんな片岡さんの興味が、競技用だけではなく、遊ぶ道具としての自転車に広がったのは自然な流れだった。マウンテンバイクが登場した直後の80年代にはカリフォルニアの森で遊び倒した。90年代にはトライアスロン、週に8回プールに泳ぎに行くほど熱を上げた。
いずれも、その後5〜15年遅れで日本に根付いたのは周知の通りだ。
「マウンテンバイクやトライアスロンは、自転車を使った遊び方の一つ。自転車はコミュニケーションツールなんです」。
遊びを先取りしてきた男は今、移動の道具としての自転車に魅力を感じている。
「気負うことなく、自然に乗っているのがいちばんかっこいい。その一台があると山や街、旅での移動が楽しくなる。そんな乗り方を提案していきたいですね」。


気になるお値段は「10万円以上20万円以内ぐらいを予算にしていただければ、選択肢は広がります」とのこと。
ビゴーレ
TEL
075-791-6158
ACCESS
京都市左京区岩倉四ノ坪町55
最寄りバス停
岩倉操車場前
営業時間
月・木・金 13時半~18時半
土・日・祝 11時〜18時半
定休日
火・水