追求することが、好き。
京町家をリノベーションしたギャラリー&クラフトショップ「PolarSta」内。「小麦と共に」を意味する屋号「こむぎと」は、自身が大の焼き菓子好きであることに由来する。店主でパティシエールの芝原三友紀さんは京都北部、自然豊かな美山町で生まれた。
高校は地元の高校の林業科に進学。「机に向かう勉強から逃れるためだった」と笑うが、屋外で体を動かすことは芝原さんの性に合っていた。でも、卒業間際になってもやりたいことは定まらなかった。最終的に選んだのは、3つ上の姉が通っていた、製菓の専門学校だった。
熱量の高い現場で感化
「好きなこと」との出会い
「お菓子作りは家でもしていたし、興味がないわけじゃない。姉から教材がもらえるし、同じ専門学校にしようと」。
入学したらきっと、お菓子作りが私のやりたいことになるはず。しかし、現実は違った。一人暮らしの生活費を稼ぐため、家の近所にある中華料理店でバイトをしながら、淡々と学生生活を過ごした。
そして迎えた卒業。就戦先は、京都を代表する洋菓子店に決まった。クッキーなどを焼く「焼き場」に配属。忙しい現場だったが、研究熱心な同僚と作業をともにするなかで、少しずつ気持ちが変化していることに気がついた。
「同じ部署の先輩たちが本当にお菓子を好きな人たちばかりで。仕事が終わった後も自主的に勉強して、みんなで意見を言い合うような環境でした」。
今まで味わったことのない感情。「自分は追求することが、好きなんだ」。スロースターターの芝原さん、その情熱に火がついた瞬間だった。
いくつもの店を渡り歩く
お菓子は自分の人生そのもの
火がついてからは、公私ともにお菓子に捧げる生活が始まった。
焼き場以外の経験も積むため、24歳でフランス料理のレストランに転職。コースの最後を締めくくる、きらびやかなデセールをつくったが、茶色い焼き菓子のほうが自分にはしっくりくると気づいた。

20代から30代にかけていろんなスタイルを学ぶために、タルト専門店、アメリカ風のカフェ、フランス菓子のパティスリーといった店を渡り歩くことになる。
38歳のとき、縁あって「PolarSta」の冨金原塊さんと知り合い、京町家を改装したクラフトショップの一角で、自分の店をもつことに。開店から3年が経つ。

「ようやくやりたいことが見えてきたように思います。私は、考えて考えて進むタイプ。だから、ゆっくりなんです」。
食べてみるとわかるが、芝原さんが作るお菓子は、素朴でありながらも、豊かで味わい深い。彼女がつくるお菓子は、彼女の人生そのものだ。一歩一歩、踏みしめながら、人よりも少しペースがゆっくりな彼女だからこそ、たどり着いた人生の縮図。それが「こむぎと」のお菓子なのだ。

焼き菓子と喫茶 こむぎと
TEL
075-600-9252
ACCESS
京都市北区紫野郷ノ土町41-15(PolarSta内)
最寄りバス停
千本鞍馬口
営業時間
11時~18時
定休日
水・木