「プロが使うものとして、この生地を新しい使い方で見せたかった」
テント職人 紀伊馬 芳則(きいま・よしのり)
「職人が使いやすいと思うモノなら、それは誰が使っても便利なはず」
図面屋 小野 真澄(おの・ますみ)
素材は工場の片隅から。
現場で培われたプロの視点。
看板に描かれた地平線から見える日の出のマークが、どこか懐かしさを醸す。
「とにかく職人の仕事が見えるモノが好きなんです」。
日の出テント3代目、紀伊馬芳則さん。大正4年創業以来、蠟引きのパラフィン防水などを逸早く手掛ける硬派な商いを見習い、二十歳過ぎから家業を引き継いだ。
「床をくり抜いたところに座を設け、床一面を机のように利用してミシン掛けをするんです」。幼い頃、そんな作業場で遊びながら育ったという彼は、いま新たな試みを邁進している。

出会いは工場の現場。
図面の交換から感じる職人魂。
「テント生地を新しい使い方で見せたかった。でも、よくある感じじゃなくてね(笑)。プロが使うグッズがよかったんです」。そんな風に感じていた頃、紀伊馬さんは打ち合わせに訪れた工場の現場で、高槻を拠点に活躍する建築設計士の小野真澄さんと出会う。
「小野さんの図面は生地の裁断の仕方まで描かれている。こんな人いませんよ」と、絶賛する紀伊馬さん。一方、小野さんも「普通は職人に図面を渡したらそれで終わり。でも紀伊馬さんは、すぐにイラストを描いて確認が来たんですよ。〝これでええか?〟ってね。ちょっとこの人違うなって思いましたね(笑)」と、職人魂をくすぐられた。
この偶然の出会いを経て、二人は鞄や小物の共同制作を手掛けることになる。ブランド名は、小野さんの「ONO」と日の出テントの「HINODE」から、「ONODE」とされた。
機能性は職人対象。
自分達が気に入ったもの。
「職人が使いやすいと思うモノなら、それは誰が使っても便利なはず。少しユニバーサルデザインみたいな感じで捉えてます」。小野さんが持つこのポリシーを、誰よりも理解するのが紀伊馬さんだ。二人がアイデアを交換するのはいつも大きな机の上。お互いが評価する多くの文房具や小物を広げ、どこがどのように素晴らしいか、談義することに時間が費やされる。
「こんなとこに、コレ使うか!? みたいな感動が、二人とも同じなんです」と、紀伊馬さん。小野さんが初めてONODEブランドでデザインした鞄は、リュックタイプの作業鞄だった。「トラックのホロの生地を紀伊馬さんにもらって、僕が使いやすいようにデザインしたんです(笑)」。携帯電話、名刺、ファイル、図面ケース、と細かく仕切られた鞄はまさに図面屋が納得する出来栄え。
「ポケットが多すぎるねん。手が掛かって大変やったで(笑)。せやけど使いやすいな」と、笑顔で話す紀伊馬さん。職人が多い京都だからこそ、自分たち職人が納得するものを作りたいのだそう。
妥協の無い機能性をデザインで語り、それを受けて、手間を惜しまない作業で応える。日光に晒された頑丈なトラックのホロは、二人の呼吸のもと、硬派な職人グッズに変身する。

株式会社 日の出テント
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