マニュアルに縛られない居心地のいい職場を。
スポーツ新聞を広げたおじさんがいる、昔ながらの京都の喫茶店がいちばん落ち着く。そんなあなたに足を運んでほしいのが、今宮神社の交差点の北西に位置するはしもと珈琲店だ。なにしろ、店を営むのはイノダコーヒ出身のおじさん3人組。おじさんによる、おじさんのための店なのだ。

代替わりを機会に
イノダコーヒから独立
創業19年目のはしもと珈琲の豆は、すべて自家焙煎。店頭にある大きな銀色の焙煎機に生豆を流し込むのは、店長の橋本政信さん、49歳だ。
「濃いめで強い北大路ブレンドは、かつてのイノダコーヒの系列にある味。中煎りが中心で濃いめ。昔ながらの喫茶店の味です。一方のむらさきのブレンドはマイルド、やわらかく仕上げています」。
橋本さんの亡父は、イノダコーヒ創業者である猪田(いのだ)七郎さんの時代、支店長として盛り立てた人物だ。橋本さんが20歳のとき父は亡くなり、七郎さんに呼ばれて橋本さんがイノダコーヒで働き始めた。最初はホール、次に2年ほど調理場を経験し、その後は焙煎ひとすじだ。
1998年に橋本さんが独立したのは、猪田七郎さんが逝去し、イノダコーヒ代替わりのタイミングだった。トップ交代とともに経営方針も変わるのは世の常だ。
「昔ながらの、マニュアルに縛られない働き方がしたかった。コーヒーをおいしく楽しく飲む原点として、おおらかで居心地のいい職場でありたかったんです」。

後輩の独立を支える
2人の先輩
30歳の橋本さんが店を始めると聞き、2人の先輩がついていくぞと手を挙げた。現在71歳の角山昭二さんは販売担当。当時を振り返り、橋本さんをこう評する。「橋本くんはね、焙煎のセンスが抜群にいい。お父さんにはお世話になったこともあり、応援したいと思いました」。
自分はコーヒーを淹れると立ち上がったのは、現在61歳の桜井健三さんだ。桜井さんは橋本さんの腕を称える。
「焙煎は感覚的なものがいちばん大事。僕も焙煎を知らないわけではないけれど、ここでは橋本くんが全部します。ガスの具合、時間、豆のはぜ。よく仕上がった豆だから、淹れやすいですよ」。
喫茶担当の桜井さんがネルドリップで6〜7杯で立てるのは、味が安定するから。「仕事は楽しさより厳しさが勝る。1人ではできないけれど、3人だから続けられる」と桜井さんは話す。
イノダコーヒで出会った2人の先輩に支えられ、橋本さんは焙煎機に向かう。
「2人が僕を立ててくれるから、もめることはほとんどありません。職場でお客さんと世間話をするのが楽しい。気楽に来てもらえる喫茶店でありたいですね」。
毎朝、出勤した3人の日課は、桜井さんが淹れるコーヒーを飲むこと。濃くて力強い北大路ブレンド、世代を超えた3人のおじさんの友情の味がする。


はしもと珈琲
TEL
075-494-2560
ACCESS
京都市北区紫野西野町31-1
最寄りバス停
船岡山
営業時間
9時~18時
定休日
年中無休