未来に向けたつながりが生まれるお店へ
大宮松原の交差点を東へすぐ。ショーケースと受取窓口があるルトングーテは、店に入らずとも商品が買えるコンパクトな焼き菓子店だ。店を営むのは、互いを信頼する母と娘。阿吽(あうん)の呼吸で、丹精込めたお菓子を次々と仕上げていく。

喫茶店で育った娘は
母と同じ調理の道へ
母の寿子さんは、もともとお菓子も料理も得意だった。調理師学校を卒業後、ホテル業界や製菓店など、さまざまな現場で働いてきた。
20代半ばで「喫茶店をやりたい」という夢をもつ男性と結婚。共働きで資金を貯め、現在の場所に自家製ケーキを出す店を開いた。約30年前、こんな店は新しく、常連客が足繁く通うようになった。
喫茶店の2階が住居で、娘の紗耶加さんは焼き菓子の香りを嗅いで育った。
「少し大きくなると接客や皿洗いなども手伝うようになりました。将来はケーキ屋さんになりたいと思っていました」。
野菜やフルーツに興味が生まれた。京野菜でスイーツが作りたいと、高校は桂高校の植物クリエイト科へ進学。在学中はコンビニとコラボした金時にんじんのチーズケーキの開発などを経験し、母の背中を追うように調理師学校へ進んだ。

コロナ禍を逆手に取り
温めていた夢を母娘で実現
カフェ専攻を卒業した紗耶加さんは、あるレストランで衝撃を受けた。「こんなにきれいで、おいしい料理を自分も作りたい!」。そこは「八百一本館」内の「SAVORY」。隣の畑で収穫した野菜を出すスタイルは理想的で、就職した。
しかし半年が過ぎて、思いがけず父母が離婚を決めた。母の寿子さん一人では喫茶店は続けられない。紗耶加さんは仕事を辞めて、実家を手伝うことになった。
そんな矢先、コロナ禍になり、高齢の常連客が多かった実家の喫茶店は痛手を負う。もともと寿子さんには、お菓子を作ることに専念したいという思いがあった。また界隈には宿泊施設が増え、海外観光客の往来もある。心地よく働けて、未来に向けた新しいつながりが生まれる店にしたい。20代の紗耶加さんは母と時間をかけて話し合い、店の立て直しを決意した。
「客席数を減らして、テイクアウトがメインのお菓子店にリニューアルしよう!」
こうして母娘が生き生きと立ち働く焼菓子店へと、生まれ変わった。開店して丸2年。「うれしそうにショーケースをのぞきこむお客さんの笑顔が励みになる」と寿子さん。子連れのお客さんも増えた。
紗耶加さんが「ケンカもしますけど、母は私の人生になくてはならない人」と胸の内を明かせば、母の寿子さんは「紗耶加は、いつの間にかとても頼れる存在になってくれた」とほほ笑む。
「お母さんに連れられた小さな子が、大人になっても通ってくれる店でありたいです」と紗耶加さん。仕事を介し、日々絆を確かめ合う母娘が作るお菓子は、じんわりとやさしく、あたたかな味がした。

ル トン グーテ
ACCESS
京都市下京区高辻大宮町140
最寄りバス停
大宮松原
営業時間
12時〜18時
定休日
火・水・木