たかが弁当、されど弁当
丸太町通沿いのマンション1階にあるオーガニック弁当の専門店「あーす きっちん かんぱにー」。弁当箱には、低・無農薬野菜をはじめ安心・安全な食材を使ったおかずがぎっしり。おいしくて体にいいことをした気分になれるのもあって、一人暮らしや子育てで忙しい編集部のメンバーは、ここの弁当には世話になっている。
子育てを通じて深まった現代の食への関心
凛とした佇まいが印象的な創業者は、岡田泰子さんだ。 大学卒業後、京都大学職員として働いた。その傍ら、29歳からフェミニスト団体の主宰をし、同時にNPO法人「使い捨て時代を考える会」にも参加。社会運動に積極的に関わってきた。自然食に関心が向いた理由は子育てだ。
「第一子の可菜子はすくすく育ってくれたのですが、第二子がアレルギー体質だったので、日々の食に目が向きました」。
第二子の健康も落ち着いたタイミングで大学職員を辞め、33歳のとき自然食レストラン「びお亭」(現在は閉店)で働き始めた。自分で作った料理が評価されて、お金をもらう。泰子さんにとって、自然食だけでなく女性の自立は大きなテーマだ。「料理で自己実現」という同じ価値観を持つ女性たちが集まる職場はとても刺激的だった。「いつかは自分も起業を」、そんな思いが芽生えた。
7年経って腰痛ゆえ転職。建築関係の研究所やタイ料理店で働いていたが、40歳になった頃だ。「びお亭」のときに抱いた起業への想いが込み上げてきた。


豆腐入り肉団子の甘酢あん950円(税込)など種類も豊富な弁当は930円(税込)〜で、おかずのみの詰め合わせも販売。
自分らしく働くために
「食」を切り口に社会貢献を
子どもたちのために夜は家にいたい。飲食業でも昼間に働ける業態を求めて、たどり着いたのが、弁当店だった。自分の子どものようなアレルギーがある人も安心できて、一人暮らしの高齢者のサポートにもなる。開店は46歳のときだ。
「不安はあったけど、始めるしかないと思いました。『最後は勇気よ』という先輩の言葉に励まされました」。
普通の弁当店に見えて、成り立ちからして違う。「店をするにしても、社会的じゃないと意味がない」。泰子さんの言葉には熱がこもる。
共働き家庭の育児のハードさ、独居高齢者の孤独、食材の仕入れでわかる自然環境の変化……。弁当店からはさまざまな社会問題が見えてくる。さらに女性の働き口としても機能する場所にしたい。そんな理想を胸に、理解者であるスタッフと共に30年の時を歩んできた。
現在、長女の可菜子さんが店長を務める。泰子さんにとってこの店は自己実現の手段であり、社会問題を解決するための実践の場であることに変わりはない。「原動力は怒りです。自分たちの社会をよくしたい。あきらめたら終わりです」。
「たかが弁当、されど弁当」。この世界をより良くするために。弁当の作り手、そして食べ手である私たちができることは、きっと想像以上にたくさんある。


あーす きっちん かんぱにー
TEL
075-771-1897
ACCESS
京都市左京区川端丸太町東丸太町9-7
最寄りバス停
丸太町京阪前
営業時間
平日 10時半〜18時半
定休日
土・日・祝日&夏期