昨夏、京都に築98年の町屋を借りた。東京と京都、2つの都を行き来し生活している。
はじめまして。ライター・エッセイストのさとゆみ(佐藤友美)と申します。
北海道の知床半島生まれ。北海道に18年、東京には32年住み(まだ住んでいる)、京都はまだ半年の新参者です。
新年早々、ハンケイ500mの編集長・円城新子さんに、「さとゆみちゃん、『京都人じゃないからこそ見える京都の魅力』を書いてみない?」と誘っていただいた。
いやっほーー! 書きたい。いろいろ、書きたい!
「なぜ京都に?」と、よく聞かれる。そのたびに「関西出張が増え、ホテル代の高さに音を上げたから」と答えてきた。
もちろん、それは嘘ではないのだけれど、ではなぜ大阪ではなく京都なのか。管理の楽なマンションではなく、町屋を借りたのかと、自分でも思う。
振り返ってみたら、まさに、「よそものだからこそ感じた京都の魅力」によって、京都と東京の二拠点生活を始めたのだなあと感じる。
京都の街を素敵だと思う場面はたくさんあるけれど、一番をあげるとしたら、「魅力的な個人店の多さ」だ。
飲食店も、小売店も、ギャラリーも。同じ顔をした店がほとんどない。店の数だけ、店主のこだわりがあり、贔屓の客がいる。
私は、その、ほかでは食べられない味や、商品や、たたずまいに、どうしようもなく惹かれている。
そういえば、京都に住む友人たちと外ご飯を食べるとき、誰もがお店の人と親しげに話すのに驚いた。みんな、友だちの家にひょいと寄ったという感じでくつろいでいる。
これが、羨ましい。
東京で「行きつけ」を作るのは難しい。少なくともいま私が住む街と、会社のある街は、この10年で地価が爆上がりしてしまい、飲食店はチェーン店ばかりだ。
行くたびにバイトの顔が変わる大型店は行きつけになりにくい。20代、30代に足繁く通った個人店は、ほとんど潰れた。
そんな私が京都では、新参者なりに何度も通う店ができた。京都にくるたび「今回は、どのお店に行こう」と悩むくらい、リピートするお店ができた。
新しい家で、amazonから続々と届く家具を組み立て終わった次の日。
初めて「自分の家」で京都の朝を迎えた日を記念して「お気に入りの店で乾杯しよう」と思いたった。でも、結局1軒に絞り込むことができず、4軒もハシゴしてしまった。
私は呑み助だけれど、50年の人生で、こんなことは初めてである。
注文をして一息ついたら、どの店のご主人も「最近はどうですか?」と話しかけてくれる。
「ついに、家を借りました」と言うと、みんな「それはそれは!」と、喜んでくれた。
出張で月に一度来るだけの街だったのに、こんなにも「行きたい店」があり「会いたい人」がいる場所になっていたのだ。
散歩途中に出会った桶屋さんで、四角箸を買う。
カウンターだけのおでん屋さんで、店特製のお出汁を買う。
銭湯で、店名の刺繍の入った手ぬぐいを買う。
揚げたてのコロッケを頬張り、家に帰る。
どれも、amazonでは買えないものばかりだ。
よそものだけど、大好きです。
京都の「顔が見えるお店」と、そこで働く人たち。


ライター・エッセイスト
佐藤友美(さとゆみ)
PROFILE
1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経て、ライターに転向。現在は、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆する。
著書に『女の運命は髪で変わる』『書く仕事がしたい』『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)など。
2025年夏より、京都と東京、2拠点を行き来する。