たこ焼き屋の前は素通りできないタイプ
地元の人は「本通り」と呼ぶのが、東一条通の南から北に伸びる吉田東通。そこに、一風変わった屋号の店がある。 「タコとケンタロー」。肩書はたこ焼き屋だ。
店主の小田研太郎さんは、埼玉県生まれ大阪育ちの54歳。高校卒業後は滋賀の大学に進学した。バンドと子ども相手の学生ボランティアに情熱を傾けた学生時代。卒業後は書店に就職したが、一転、パン職人に。「自分にはサラリーマンはなじまない。将来的には自分の店をもちたい」、そんな想いからの転職だった。

大好物のたこ焼き
独立の地は京都
たこ焼き屋を志した理由はこうだ。パンは設備の初期投資にお金がかかるけれど、たこ焼きは焼き台さえあれば勝負できる。それ以前に、「たこ焼き屋の前は素通りできないタイプ」と話すほど、たこ焼きは小田さんにとっての大好物だった。 独立資金を貯めるため、運送会社で7年間、朝から夜までがむしゃらに働いた。2010年に独立。場所には長く住んだ滋賀ではなく、京都を選んだ。
「京都は街のサイズ感がちょうどいい。田舎なんだけど、不便じゃないところが気に入って」。 1年以上をかけて物件を探し、出会ったのが吉田東通にあるこの場所だった。普通、たこ焼き屋というと一目でそれとわかる店が大半。でも、こちらは名前といい、表からは何の店かわからない。
「もともと、へそ曲がりだから。何の店かわからない店にしてやれと思って」。 音楽好きということもあり、たこ焼き屋でありながら月に何度か音楽ライブも行う。型にはまらない。それがちょっと変なたこ焼き屋「タコケン」なのだ。

世代間の交流を生む
祭りとたこ焼き
小田さんにはもう一つの顔がある。それは、2011年からスタートした「吉田東通り夜市」の実行委員長だ。吉田東通は吉田、聖護院、岡崎の3つの地区が交わる場所。それぞれの祭りも開催されているが、参加は地区の住民に限られる。
ある日、店の前を通る小学生たちの会話が聞こえた。「うち吉田やし、聖護院の祭りには行けへんわ」。この言葉が、祭りを興すきっかけになった。住んでいる地域に関係なく、皆で楽しめる祭りを作りたい。最初は参加店舗10店ほどの小規模な祭りだった。しかし10年が経ち、今では地区外からも多くの店舗が参加する左京区の夏の風物詩となっている。
「祭りって平和じゃないですか。世界平和は祭りが作るんじゃないかな、と思っていて。それに、祭りがないと世代間の交流も生まれないんです」。 世界平和とまではいかないが、それは、たこ焼き屋も同じだ。若者、子連れの親子、老人まで、今日も店のL字カウンターにはさまざまな世代の客が集う。ふわトロ食感のたこ焼きを笑顔でハフハフと頬張る時間は、小田さんが願う平和な世界そのものだ。

タコとケンタロー
TEL
075-771-4736
ACCESS
京都市左京区聖護院東町1-2 聖護院ハイツ1F
最寄りバス停
京大病院前
営業時間
11時~23時
定休日
不定休