ポーランド料理で、恩返ししたい
大量の本の置き場に困ってブックカフェを始めたところ、提供していたポーランド料理が評判となり、今ではポーランドからも客が訪れる。カウンター越しに、「MAX1921」の店主、細田信輔さんと妻の英子さんが、話してくれた。
信輔さんは今年で70歳。ポーランドとの縁は信輔さんが20代の頃に遡る。慶應義塾大学で経済学を専攻。卒業後はメーカー勤務を経て出版社に転職。ドイツの歴史本の編集を担当したところ、非常に興味深い。「編集ではなく、自分でこのテーマを研究したい」。想いは募っていった。

研究のため、
家族で移り住んだ東欧ポーランド
信輔さんは仕事を辞めて、経済分野におけるドイツの歴史を研究するために慶應義塾大学の大学院へ進学した。さらに学びたいと、留学を考える。研究対象はドイツ人とポーランド人が混住する鉱山地帯だったため、隣国ポーランドの大学に決まった。しかし、時は1987年。チェルノブイリ原発事故の翌年だ。妻の英子さんは当時の迷いを振り返る。
「まだ娘2人も小さく、一緒に行くべきか迷いました。でも、離れて暮らすマイナス面が大きいと行く事にしました」。
家族4人で、6年近くをポーランドのヴロツワフという、当時は日本人のいない地方都市で暮らした。店で出している料理は、そこで教わったものだ。
そして信輔さんはポーランドのヴロツワフ大学で歴史学の博士号を取得、1995年からは龍谷大学で教授に。2025年3月の定年まで30年間教鞭を執った。

あの頃、憧れた革命家の
名前を冠したブックカフェ
店では元ワインバーの地下セラーを書庫に改造し、図書館として開放する。なかでも存在感を放つのは革命と歴史と思想に関連する本だ。これらはすべて学生時代の愛読書。「ドイツとポーランドの民族史」という研究テーマと重なるかのようだが、「自分としては異なる分野」という。「学生運動の時代を過ごした頃は観念的で、理念や思想が先行していました。でも歴史学の研究で求められるのは事実(ファクト)。実際何が起きていたかを、現場で知ることが大切なんです」。
暗号めいた屋号の由来は1921年にドイツで武装蜂起を起こした義賊のような革命家マックス・ヘルツ。信輔さんの永遠のヒーローだ。かつて革命というものに身を焦がした若き日を、信輔さんはこう振り返る。
「でも理想を求めるほどに絶望にぶち当たる。追求するほどに、単純ではないということに気づいたんです」。店では蔵書について自分からは話さない。「聞かれたら話しますが、店では料理担当なので、結構忙しくて」と笑う。日本人一家に親切にしてくれた現地の人々への恩返しも込めてつくるポーランド料理と、人生の軌跡でもある本の出会い。知性とリアルな経験に裏打ちされた空間は、とても居心地がいい。

MAX 1921
TEL
075-708-2289
ACCESS
京都市左京区二条通東入ル新先斗町136-1
最寄りバス停
丸太町京阪前
営業時間
10時~18時
定休日
月~木、臨時休