もっと! ハンケイ500m
「もっと! ハンケイ500m」は、『ハンケイ500m』本誌で特集したことのないバス停や地下鉄駅の周辺地域をフィーチャーし、多様な価値観を持った人を紹介するコーナーです。今回は、京都市営地下鉄東西線 醍醐駅から徒歩9分、石田駅から徒歩7分ほどにある「HEROES COFFEE」店主の広田一雄さんにお話を伺いました。
注文を受けてから焙煎する、フレッシュなコーヒー豆
琥珀色で満たされたカップから、湯気とともに深い香りが広がる。
明るい輝きを湛えたその香気に包まれると、硬く強張っていた時間がゆっくりと解けていくようだ。
甘くて、苦くて、酸っぱくて。それらすべてが絶妙に調和したコーヒーは、なんだか人生そのものみたい。
「HEROES COFFEE」店主の広田一雄さんが提供するコーヒー豆で淹れた一杯は、そんな魔法のようなひと時を味わわせてくれる。

「メイド・イン・京都」の熱風式焙煎機を相棒に、京都市伏見区醍醐に店を構えて2026年2月で10年目を迎える。
注文を受けてから焙煎するフレッシュな美味しさが評判を呼び、京都市はもちろん、宇治市、滋賀県から通う常連客も多い。

地元の醍醐地域を舞台にした短編映画を常連客とともに自主制作したり、店内に物々交換の棚を設置したり。人と人、人と地域がつながる出会いを生み出す「HEROES COFFEE」は、今や伏見を代表するコーヒー店のひとつだ。

順風満帆なキャリアよりも、大切なこと
広田さんの前職は、国内大手の化学メーカーの社員。
大学を卒業後、研究職として入社し、京都府宇治市にある研究所に配属された。
環境系素材の研究を担当し、実験を重ねる日々を過ごす。
子どもの頃から「引っ込み思案で、人見知りな性格だった」という広田さん。研究の仕事を通して人と関わる中で、次第に自分自身が変化していくことに気が付いた。
「年齢を重ねて、だんだんと人と話すことも楽しくなっていきました。人間って、経験を積むと変わっていくものですよ」。
40代で「人と向き合う仕事をしたい」と、本社の企画営業へ異動を希望。研究部門で培った経験を生かし、環境に配慮した新素材の製品開発を担った。
周囲からは順風満帆に見えるキャリアを歩む一方で、「自分で何かを始めたい」という思いが募っていったという。
「父は建設関係の会社経営、母の実家は惣菜店と、両親や親戚にも自営業が多かったので。それに、会社に勤めていると、本当に自分がしたいことって、できないでしょ?」
安定した仕事か、独立か。50代の入り口に立った広田さんが心を決めたのは、定年退職した後の自身の姿をイメージしたことがきっかけだった。
「どんなことでも何か新しいことを始めるのって体力も精神力もいる。ましてや独立することを考えたら『定年後に起業するのは難しいな』と思い、早期退職することにしました」。
思い立ったら計画的に動き始める広田さん。自治体が主催する起業セミナーに通って事業計画の作成方法などのノウハウを学ぶうち、「子どもの頃から好きだったコーヒーを仕事にしよう」と思いつく。

「実家では、ミルでコーヒー豆を挽くのが当たり前でした。当時は家庭でコーヒーをドリップするのは珍しく、その影響か、子どもの頃からコーヒーが好きでよく飲んでいました」。
研究職時代も仕事の合間のコーヒーは欠かさなかった。思えば、人生の傍にいつもコーヒーがあった。
「コーヒーが儲かるとは、最初から考えてない。ただ、自分が好きなことで、自分でできることなら、ゆっくりでも続けられると思った」。
「自分がしたいこと」を、実直に追い求めて
店では世界各地のスペシャルティーコーヒーを中心に約30種の豆を取り揃える。
それぞれの豆ごとに焙煎温度や時間を細かく調整し、好みに合わせた香りと味わいに仕上げてくれる。

焙煎機をはじめ店で使用する電力は、三重県の青山高原にある風力発電所と契約している。店内ではリユースカップや自然素材の葦(ヨシ)でできたストローを使うなど、環境のことを考えた工夫も積極的に取り入れている。
「自分で選べることなら、環境に良い方を選びたい。別に難しいことじゃないし、お客さんとの話題づくりにもなる。『うちのコーヒーは風の力で焙煎してるんですよ』って」。

顔を見て、冗談を言い合って、ガハハと笑って。
「コーヒーがきっかけで色々な人と出会えるのが、店をやっていて何より楽しい」。
自分がしたいことを実直に追い求めた先で見つけた広田さんの「今」は、最高に充実している。
店名の「HEROES COFFEE」は、敬愛するデヴィッド・ボウイの名曲『Heroes』から取った。Be A Hero, Just for One Cup.
「一杯だけで、誰もがヒーローになれる」。看板に書かれたキャッチコピーは、広田さんが見つけた人生の真実だ。
連載シリーズ「MOTTO! ハンケイ500m」とは?
京都市交通局による、地下鉄・バス利用促進の取組「MOTTO!」。後述の『「3つのもっと」を皆の「モットー」に』をコンセプトに、「市バス赤字系統の利用促進」、「地下鉄とバスを組み合わせた移動への誘導」を重点としたさまざまな取り組みを展開しています。
地下鉄・バス「MOTTO!」利用促進プロジェクト とは
https://www.city.kyoto.lg.jp/kotsu/page/0000342840.html
「3つのもっと」
- もっと周辺部のバスに乗ろう!
- もっと地下鉄を組み合わせて移動しよう!
- もっと沿線地域を活性化しよう!

そんな「MOTTO!」と、京都の多様な価値観を「バス停」を起点に発信してきた『ハンケイ500m』がコラボレーション。「MOTTO! ハンケイ500m」と題して、月1本のWEBコンテンツを発信していきます。
「3つのコンテンツ」
- もっと!ハンケイ500m!
『ハンケイ500m』で特集したことのないバス停や地下鉄の駅を中心に、多様な価値観を持つ人を探索し、ご紹介します! - あの日の登下校
「学生の街」京都ならではの学生グルメを紹介するシリーズ。地下鉄・バスに乗って登下校したあの日の思い出。エピソードを交えて、沿線地域の魅力を伝えます。 - 京都のマイナ~な旅
京都には、まだまだ知られていない素敵なスポットがいっぱい。マイナーな路線・沿線地域をまわり、文化人やアーティストがその魅力をご紹介します。
地域情報誌『ハンケイ500m』に収まりきらない京都の知られざる魅力や、地下鉄・市バス利用で出会える素敵な人やスポットなどを発信。もっともっと、京都の魅力を楽しめる連載シリーズです!
HEROES COFFEE
TEL
075-205-1509
ACCESS
京都府京都市伏見区醍醐江奈志町10-111
最寄り駅
醍醐駅、石田駅(地下鉄東西線)
営業時間
10時半~20時
定休日
月曜日
Sponsored by 京都市交通局